推理小説読書日記(2012/07)
2012年7月04日
楽園の崩壊<ヴィンジ>
架空の太陽系を舞台にした異星人間の接触と闘いの話です。楽園というのは、その太陽系の名称です。そこの住人と接触して当てにする事に希望を持つ、ある星の人がいた。 そして、ついに楽園に到着したが、気づくと追跡していた船団を見つけた。いつのまにか、楽園は崩壊して宇宙に飛び立った一部の人が、来襲者に文明回復の希望を持っていたが 友好的ではなかった。
2012年7月04日
策謀<堂場瞬一>
「警視庁追跡捜査係」シリーズ?の第2作です。西川と沖田は全く別々と思われる事件の追跡捜査を行っていた。古い事件だったが捜査に従って動き出し、双方に関係が 見えてくる。中がよいとはいえない2人が失敗もしながら辿り付いた先は、どちらも納得できるとは限らなかった。
2012年7月04日
老人のための残酷童話<倉橋由美子>
10作からなる連作です。残酷童話はいつかブーム的になった事がありますが、もともとホラー系が好きで諧謔と自由な発想から展開させるこの作者の作品は、読者を 子供ではなくもっと広げたものです。老人のためといっても、誰しもが読んでも驚く内容です。ただし、登場人物が老人なのが題名の由来でしょう。あるいは良い老後を 期待している人にそれは甘いと言っているかの様です。
2012年7月10日
検事城戸明<佐賀潜>
題名の通りの検事ものですが、検事の苦悩はプライベートの女性関係となるとパターン化して主題とはなりにくいです。主人公の障害としては、ややオーソドックス ですので、本筋の謎を期待したいですが、本作は検事の苦悩が主題ですので、ややつらいパターンに入ってしまいます。
2012年7月10日
骨笛<皆川博子>
幻想と怪奇と、落ちと謎を残す終わり方とどこか、ミステリ風の終わり方を混ぜ合わして、短編集を作ると読者は悩み作者の掌でもてあそばされかねないです。 そして、個々の話がどこか統一というか関連がありそうに見えると、急に不安になります、何か読み逃していないか。登場人物名がカタカナだと、どこか不安です、 漢字だとちょっと安心です、どうも冒頭から振り回されている気がします。
2012年7月10日
赤ちゃんはまだ夢の中<青井夏海>
助産婦シリーズ3冊目で、2冊目の短編集です。しかし、時間が空いています。出産事情の変化とかの話題ではなく、人が生まれるミステリーはどこかのどかです。 自宅出産てどのくらいあるの?、伝説の助産婦っているの・・・。情報小説でないので、やや頼りない主人公ののどかなどたばたに付き合って行くのが、楽しい 読み方でしょう。
2012年7月16日
烏金<西條奈加>
小金貸しを主人公にした時代小説です。烏金とは、朝に貸して夕方に返してもらう金貸しの方法です。ごうつく金貸しばあさんの弟子になった主人公は、借り手が 烏金で暮らしを立てられる商売を探して、借りる方も返せて、貸し倒れしない商売を進めてゆきます。身元不明で目的不明の主人公の、狙いは何かが後半の謎になります。
2012年7月16日
初めての海<樋口有介>
「船宿たき川捕物暦」の第2作です。武士から岡っ引きの元締めになった主人公が、やや勝手が違う環境で事件を解いてゆきます。刀を持たなくなり鉄扇だけでは、やや 寂しいがまた異なるストーリー展開になります。背景の松平と田沼の争いは、終わるとシリーズも終わりそうで現状維持でしょうか。
2012年7月16日
この謎が解けるか(2)<鮎川哲也>
「私だけが知っている」のシナリオ集の第2弾です。シナリオ>短編となった作品もあり、読み比べもよいでしょう。録画のない時代ですから、謎はシンプルで判り 易く、入門編といえるでしょう。
2012年7月22日
魚たちと眠れ<結城昌治>
作者の初期の長編です。どのように見れば良いのかが難しい作品です。場所は海上の洋上大学で船密室とも言えるが、そのような拘りはありません。この背景で 何か特別な事をやりたいという訳でも無さそうですが、そこに乗り会わせた人物はたんたんと描かれたり、だれもが推理らしきものを述べたりします。そして意外な 収束へとは言いにくいが、長さを感じさせない作品です。
2012年7月22日
髑髏検校<横溝正史>
戦前は、出版検閲も厳しいので時代小説に題材を求める事も多かったです。「神変稲妻車」「髑髏検校」からなる中編集です。特に「神変稲妻車」は伝奇小説の 典型ですが、多彩な登場人物と展開の速さと小道具の多さは、1作にはもったいない濃い内容です。「髑髏検校」は世界に散らばる吸血鬼伝説の日本版です。作者に 恵まれて生き生き??しています。
2012年7月22日
田舎の刑事の動物記<滝田務雄>
田舎でも事件は起きると言っても、都会の警察小説とは一味ちがう内容です。多くない事件を少ない人数で解決する、それに環境もかなり異なる、組織より人物 という事で、ミステリー向きの状態です。主人公はちょっとした名探偵なのでしょう。
2012年7月28日
蒼の悔恨<堂場瞬一>
警察小説ですが、いつもと違ってコンビを組んだ所轄の女性刑事の怪我が主人公に長く残ります。そして、女性刑事の特殊な事情からちょっと異なる捜査へと なって行きます。従って、表面的には普通の警察小説の外観ですが、ストーリーはかなり異なる展開を示します。たまたま舞台が警察だったような。
2012年7月28日
マークスの山<高村薫>
ある男は、マークスと名乗りそれが誰かが判りません。そして、時間を経て凶悪な犯罪が起きますが、警察組織の縄張り争いとターゲットがはっきりしない 状況は、逆に警察組織の欠陥を浮き彫りにします。その中で独自の捜査を続ける合田刑事がたどり付く真相とは?。
2012年7月28日
水晶の鼓動<麻見和史>
警察捜査を無視する様に起きる連続爆破事件に、警視庁11係と如月・鷹野の凸凹コンビが立ち向かいます。遺留物担当の二人が偶然出会った爆破現場、 漸くミッシング・リンクに辿りつくが、はたして次の爆破を阻止できるか?。本格テイストの警察小説いうスタイルが生きたストーリーです。
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2012/07に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。