推理小説読書日記(2012/04)
2012年4月05日
奇面館の殺人<綾辻行人>
鹿谷門実が探偵役(途中から)の館シリーズの9作目ですが、なんとゆったりしている事です。本は分厚くなっていますが・・・。謎の館に謎の人物が集まり、仮面を つけてという定番の設定です。そして、閉ざされて殺人が始まります。これだけ揃えば、何でも出来る状況です。原点に返り過ぎた感がありますが、それもまたシリーズ でしょう。いつになるか10作目?。
2012年4月05日
犯行以後<結城昌治>
初期短編集です。連作でない短編集で、ジャンルも色々とあります、短編集の醍醐味とも言えます。そして書かれた期間の短さを考慮すると、作者の筆力と才能に驚き ます。これ以後も多くの短編と、複数分野の長編群を発表するこの作者をこの時点で見えて来そうです。
2012年4月05日
死の扉<レオ・ブルース>
新訳との事です。旧訳以来、この作者もかなり翻訳されました。まだ多くの本があるので、初紹介を望む声も多いです。ただ、訳者が旧訳と原書の問題点をいくつか 指摘しています。その意味では、より精度の高い完訳なのでしょう。
2012年4月11日
幽霊男<横溝正史>
金田一耕助と等々力警部が登場する怪奇色の強いミステリーです。戦前のこの作者の作風であり、戦後に本格ミステリを書き始めたが、そのふたつの面を 加えた作品であり、多く残されています。本格でも背後に雰囲気はありますが、雰囲気ではなく背景そのものが怪奇の世界です。異常な環境で生まれた異常な 性格の人物が犯す異常な犯罪が描かれます。
2012年4月11日
ガリレオの苦悩<東野圭吾>
湯川学シリーズの5作からなる連作です。テレビドラマ化で、登場した内海薫刑事がドラマ化以降には登場します。サービス精神が旺盛な作者です。犯罪捜査 には関係したくないと言う湯川だが、内海のしつこい依頼で見かねて?仕方なく参加するのが基本スタイルです。犯人が湯川に対抗意識を持つ事もあります。
2012年4月11日
11月そして12月<樋口有介>
青春ミステリが得意の作者ですが、本作はミステリではありません。ただ青春小説というべきでしょう。カメラマン志望の主人公の家庭は、皆が勝手に生きている。 そんな主人公が出会った少女?は、マラソンランナーとして期待されていたが、現在挫折していた。そして益々、主人公の周囲でおきる挫折やもめごとだが、 主人公は冷静なのか、無理して大人になろうとしているのか・・ひとつずつ結論を出す・・・それが主人公の結論だった。
2012年4月17日
三つの名を持つ犬<近藤史恵>
異なる生活を送る男と女が出会った犬、そしてそこに後ろめたい行為が発生する。それは片方は必要にかられ、他方はちょっとした疑問だった。接点は犬 だったが、思惑と真実とが絡まる事で意外な進展になります。
2012年4月17日
京都三年坂殺人事件<大谷羊太郎>
名探偵・八木沢警部が出会った女性からの頼みは、八木沢の捜査を惑わします。老獪な探偵が落ちた感情とそこからの脱出という意外な展開です。結果的に 東京と京都を度々行き来する事になる事件になります。
2012年4月17日
疑装<堂場瞬一>
西八王子署での新しいコンビの藤田に、子供の事件なので生活安全課の山口美鈴を加えて調べ始めた事件は、群馬の小曽根へと波及します。探偵となった 小野寺冴との出会い、非協力的な小曽根警察、そして閉鎖的な町はどのような謎を隠し、探しているのか。またしても警察の不祥事を鳴沢が暴く。
2012年4月23日
酔郷譚<倉橋由美子>
没後出版の幻想小説短編集です。登場人物的には、連作となっています。とあるバーから始まり、行く先が拡がる話は、現実か幻想か判らないうちに どんどんと深みのある風景と観念へと入って行きます。登場人物自体が何かに変化するのか、状況が変化するのか、あるいはその幻想を見るだけか、 読者がその世界に入って行くことには違いありません。
2012年4月23日
聖女の島<皆川博子>
孤島、修道会、矯正施設と現代の作品風のアイテムが揃っていますが、本作は1988年の作品です。そして、非行と性の問題が絡んで殺人へと進む展開です。 典型的な幻想ミステリですが、1人称の問題や現実かどうかが、判断出来にくい構成は早すぎた傑作と言えるでしょう。
2012年4月23日
サクソンの司教冠<トレメイン>
ピーター・トレメインの「修道女フィデルマ」シリーズは長編5作目から、翻訳されました。そして、徐々に元に戻り第1作から第5作まで揃いました。 第2作の本作の登場で、ようやく時系列に読めるのです。アイルランドの修道女フィデルマがローマとの接触時代の背景事件は、宗教的にもシビアでかつ、 異なる習慣が混ざっており、複雑なプロットになりますが論理的な解決へ導きます。非論理的な「解説」?が意味不明なのだが・・・。
2012年4月29日
キング&クイーン<柳広司>
元SPのヒロインが巻き込まれたチェスチャンピオンの護衛という不思議な要請から始まります。チェスが背景ではなく、テーマでもあるのでどれだけ正しく 描くかも謎の解明上に重要ですが、苦労が見えるがまだ不十分に思うのが残念です。世界を巻き込む事件なのか、個人的な事件なのか、ストーリー的には バランスが良い作品です。
2012年4月29日
新門辰五郎事件帖<海渡英祐>
江戸火消し新門辰五郎の70才という晩年の話です。連作の最初が江戸で、明治維新になって徳川と一緒に駿府へ行き、そこが舞台となります。そして 廃藩置県と共に東京に戻って最終話となります。警察小説でも捕物帳でもない、謎を含む人情話風です。
2012年4月29日
小説・江戸歌舞伎秘話<戸板康二>
江戸歌舞伎を題材に、作者が話を肉付けした短編集です。歌舞伎の世界だけでも、多くの逸話がありその解釈も色々ある事が判ります。勿論小説ですから、 作者の自由な発想と思うが、何故か説得性もあります。
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2012/04に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。