推理小説読書日記(2011/12)
2011年12月01日
新青年1938<>
第二次世界対戦に突入する直前の年に注目したアンソロジーです。戦前と戦中との境目になります。これ以降、探偵小説も多くの制約の中でのみ発表できる のみになります。赤沼三郎の長編「悪魔黙示録」を中心にした選題です。戦争の影は直接には、以降長く続き、間接には現在も存在します。
2011年12月01日
天命龍綺<獅子宮敏彦>
架空の大陸と周囲の島国とを巻き込む、国・皇帝・年号の変更にまつわる数々の事件と謎を描きます。架空の歴史と背景を舞台にした、SF世界のミステリです。 当然ながら、この舞台でなければ成立しない謎が次々と登場します。それが解けるかかどうかは、ある程度話が進んで、必要なアイテムが揃ってからという事に なります。
2011年12月01日
ラーオ博士のサーカス<フィニィ>
一応、SF文庫の1冊ですが、幻想か怪奇か、単なるほら話かさえ俄には判断できません。アリゾナの街にサーカスが来るといっても、そもそもサーカスの中身が 何なのかが問題です。奇妙なものばかりが登場するに至ってはサーカスなのか・・・。
2011年12月07日
夜歩く<横溝正史>
旧家の因習・探偵小説作家の1人称記述・顔無し死体・夢遊病・金田一耕助と、本作者らしいアイテムが揃った作品です。内容もトリックで満ちています。 ただその内容から、梗概自体が難しいです。嘘もネタバレもなしで、内容の紹介が難しい作品です。この分野での作者の拘りが満ちています。
2011年12月07日
千里眼<松岡圭祐>
印象は、アニメ作品を小説にした内容に感じます。短い文節の羅列とテンポは読みやすいが、逆に小説的ではない。多数の要素が含まれているが、ミステリ としては薄いので、それ以外のジャンルの読み方をするべきなのだろう。ヒロインの飛び出た能力と多様性がひきです展開で進みます。ヒロインの為の作品と 言えるのでしょう。
2011年12月07日
月への梯子<樋口有介>
不思議な小説です。何がかは、なかなか説明が難しいです。ミステリ要素が、予想外の展開から生まれ閉じるが、小説としては・・。難しい展開です。 小説の構造自体が複雑で謎を持つ作品と言えるが、これも言い過ぎたかもしれません。
2011年12月13日
魔炎<高木彬光>
副題が「大前田英策推理ノート」です。やや、ハードボイルド風の私立探偵の短編集です。トリックや論理よりも、警察小説・犯罪小説・風俗小説 の要素が多めに入っています。大前田英策自体が、推理よりも任侠の末裔を気取る力と人情派ですから、そのような展開になります。
2011年12月13日
眼鏡屋は消えた<山田彩人>
2011年度鮎川哲也賞受賞作です。題名は、作中劇の題名ですから、それからは内容は分かりません。学園で起きた事件の過去と現在を、SF風の 設定の語り手の私・・・時代を超えて過去に個人だけ戻ってしまった・・・と探偵役が謎を追います。何故、架空の設定?、その1人称とかは微妙な 問題です。
2011年12月13日
蟻の階段<麻見和史>
不思議なデコレーションらしきものを施した殺人?事件、それが連続して起きますが曖昧なメッセージは捜査員を悩ませます。その理由は何か、あるいは 何故か?。警視庁捜査一課第11係シリーズの2作目です。警察小説のスタイルの本格ミステリです。
2011年12月19日
人間の尊厳と800メートル<深水黎一郎>
個々の繋がりの無い、純粋な短編集です。こちらが普通ですが最近は、全体で長編的になる本が増えていてむしろ珍しいとも思えます。長編では トリック小説の傾向が強い作者ですが、短編となると多彩な切り口になります。アイデアと枚数のバランスでしょう。カタカナを全て漢字の当て字に した作品も含まれていますが、これは短編向きと思います。
2011年12月19日
信州安曇野殺意の絆<大谷羊太郎>
ヒロインの婚約者とその友人が安曇野旅行の後で、友人が死んだ。ヒロインと婚約者の二人は再度旅行して謎を調べ始めるが壁に突き当たった。 東京で殺人事件が起こり八木沢警部等が捜査するが、そこに接点が見つかり次第に謎が絞られて行きます。
2011年12月19日
遮断<堂場瞬一>
警視庁失踪人捜査課の高城は、法月の移動と公認の田口の未経験とやる気のなさに悩む。その中で、勤務時間内の事務だけ行っていた六条舞の父が 失踪した。実は厚労省の審議官であり失踪・誘拐の疑いがあり、多方面担当が捜査を始めた。失踪課は失踪人捜査依頼により参加するが、やや手伝い気味 だった。同時にインド人の派遣労働者の失踪も扱い少ない人数でのやりくりが始まった。
2011年12月25日
鎖(上)<乃南アサ>
所轄の警邏の刑事の音道貴子は、殺人事件の捜査本部に配置になった。しかし、コンビになった本署の刑事は仕事はいい加減で、逆に音道に 言い寄る始末。そして、報告を隠して手柄を狙う事に音道は不審を持つ。さらには、音道に拒否されると仕事上でもやつあたりするが、それが禁止の 単独捜査になり音道は犯人の誤解と偶然が重なり、拉致されてしまう。
2011年12月25日
鎖(下)<乃南アサ>
音道の行方不明で、コンビのいいかげんな捜査が明らかになるが、同時に他の事件との繋がりも出てくる。滝沢刑事は別の事件から関わるが音道と過去に コンビを組んだ経験から、音道を信じて救助と犯人逮捕に進む。鎖につながれた音道は・・・・?。
2011年12月25日
永遠の館の殺人<二階堂黎人・黒田研二>
雪の山荘の事件と、断片的に併行して書かれた事件が併行?して進みます。山荘は、二つにわかれており、謎をもった人間が多い。そして事件が連続し ます。永遠という事は何を指すのか、特殊な環境の中に特殊な状況があり、特殊な人物が登場するという、納得出来るかどうかの境目に読者は置かれます。
2011年12月31日
もう一人の私<北川歩美>
不思議な世界を含むかも知れないと思わせる内容の短編をあつめた作品集です。本の題名は、作品ではなくテーマですが、ややネタばれ傾向もあります。 しかし、裏にも利用出来ますから短編集では、むしろ先入感を持たせる有効な題ともいえます。
2011年12月31日
三本の高フ小壜<デヴァイン>
本格でありながら、キャラクタもなく背景も毎回異なる作者です。ただ、雰囲気はどれも似た所があると感じます。ヒロインの心理の表し方と、読者の 受けとりかたは、ちょっと微妙な所があります。それが結果に結ぶ面がありますから。
2011年12月31日
女王蜂<横溝正史>
下田の南の孤島から、本土に移動したヒロインの周囲に次々に事件が起こります。それぞれが不可能性がたっぷりという、重量級の作品です。東京地区 担当の等々力警部はあまり活躍しませんが、金田一は早くから登場します。背景の整理に時間がかかり、やや防御率が下がったようです。
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2011/12に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。