推理小説読書日記(2011/09)
2011年09月02日
灰と星<ゼブロウスキー>
オメガポイント三部作と呼ばれるスペース・オペラの1冊です。ただ、テーマは観念的というか哲学的というか、ずいぶんと雰囲気が異なります。 このジャンルのイメージが、宇宙とか技術とかが先行しがちですが、色々なアプローチがあります。ただ、異質な読後感は存在します。
2011年09月02日
サイファイ・ムーン<梅原克文>
作者は、アメリカでは「大衆娯楽SF」をサイファイと呼ぶと言います。本著は、「月の部」と「断章の部」からなります。主体は「月の部」で、何とも 言いがたい作品です。SFなのかホラーなのか幻想なのか、いやサイファイです・・判らない。とにかく特殊な能力者たちが次々と登場します。その理由は 納得したり、受け入れ難かったりします。簡単じゃ無いという作者の声が聞こえる気もします。
2011年09月02日
蜘蛛の糸<黒川博行>
短編集ですがテーマは、不明・・ミステリではないだろう。多彩な作者ですが、これはまたイメージ外の作品です。笑ってしまう・・普通の反応でしょう。 深刻に読む・・・ちょっと心配です。また読みたい・・・ハードボイルドとか本格とかの方が無難でしょう。
2011年09月08日
風極の岬<夏樹静子>
検事・霞夕子シリーズの短編集の3冊目です。通常の叙述方法になっています。東京検察局から、北海道帯広の検察支部の支部長に転勤になっています。 夫への手紙・メール?が度々登場します。もともと事件は少なく、担当範囲も広いし仕事も支部長でかつ公判も担当します。それでもひまなようです。色々な 絡みで北海道全体を舞台にしています。
2011年09月08日
復讐保険<高木彬光>
色々混ざった短編集です。霧島三郎物が2作、大前田英策物が1作、そのた4作ですが内容は多岐です。本格推理から、SF・時代伝奇まで統一されていません。 作者の傾向とも違うようで、異色短編集でしょう。
2011年09月08日
一本の万年筆<左右田謙>
副題が「県立D高校殺人事件」です。似た題名・舞台ものが他にあるので、一種のシリーズかも知れません。内容は本格推理ですが、複数の捜査者の視点から 書かれており、真実を整理するのが厄介です。生徒ではなく先生が主体の学園ものです。
2011年09月14日
八月の舟<樋口有介>
葉山研一の家庭は、やや複雑で母とふたりでいる。夏休みに校長の娘の晶子と出会う。親友の田中をまじえた、夏休みが始まり、色々な事に出会う。勿論 事件も出会う。旧友や思い出を交えて、青春の夏は過ぎてゆきそして、母親の死で終わってゆく。
2011年09月14日
暗い旅<倉橋由美子>
作者自身の解説とも作品ノートとも言えるものがある。そしてそれは、その作品の当時の批評家の姿勢や読み方の批評でもある。1行で書ける内容を もってまわって、他人の評を気にして迷走していると作者は見ている。主人公が失踪した婚約者を追って、東京から京都まで旅をしてゆく。シンプルな中に 主人公の2人称の揺れる感情が溢れる。
2011年09月14日
警視庁特捜班.jp<我孫子武丸>
宣伝目的であつめられた、ちょっと変わった警察官たちの集合の特捜班です。それゆえ知名度も上がり、事件に巻き込まれるが、その対応は性格そのままに 風変わりかつ可笑しい。警視総監だろうが怖くない。その行く先はどこへ?。
2011年09月20日
佐渡金山 死文字の謎<大谷羊太郎>
ダイイングメッセージ?「さと」「さど」?らしきを残して殺された女性の捜査は、意味があるのか、意味はどちらかで別れた。捜査から解決の末に判った が、果たしてどれがただしかったのか。書いた者・読んだ者・捜査する者・・・それぞれの解釈があったが・・・。
2011年09月20日
月蝕島の魔物<田中芳樹>
「ヴィクトリア朝怪奇冒険譚シリーズ」第1作です。舞台は19世紀イギリスのスコットランド地方で、ディケンズとアンデルセンが遭遇した事件です。 3部作のはじめです。異なる性格の文豪たちが出会った、ある島での冒険の結果は・・・。
2011年09月20日
帰郷<堂場瞬一>
鳴沢了シリーズ5作目です。第1作で祖父と父の事件に関わり、その後東京警視庁にいる鳴沢刑事の父が故郷の新潟で亡くなった。葬式に帰郷した鳴沢は 父が解決出来ず、時効になった事件の絡まれてしまう。わずかの新潟滞在時間と、捜査権限のないなかで、捜査を始めた。
2011年09月26日
笑う警官<佐々木譲>
初刊は「うたう警官」でしたが、文庫化時に映画と同じ題名に改題されました。奇しくも、マルチン・ベックシリーズと同じになりました。不祥事で北海道警 は大幅な配置転換を実施したばかりで機能していません。そんな時にまた内部不祥事が起きたかのように、強引な情報隠しが進みます。不審に思った複数の刑事が 影の捜査本部を作り、限られた時間で捜査と解決を目指します。
2011年09月26日
他言は無用<リチャード・ハル>
異色ミステリーという肩書きです。たしかに書かれた本格時代には珍しい、内容の薄い内容です。悪い意味の意表をつかれます。何かありそうで、何もない それは違うだろうと思っても、そこが異色だと言われると、騙された方が悪いのかと思っても見ます。でもおかしい・・。
2011年09月26日
人間風眼帖<山田風太郎>
著者が書き連ねた、未発表の日記風の雑文を整理したものです。新聞のコラムよりは面白いし、内容は多岐に渡ります。最近、この作者のエッセイ風のものが 複数出版されています。この作者の隠されていた、もうひとつの姿なのでしょう。
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2011/09に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。