推理小説読書日記(2011/08)
2011年08月03日
悪魔の山<高木彬光>
名探偵・神津恭介が登場する、少年読者向けの作品集です。短編10作収録の同人誌出版です。冒険・サスペンス要素も取り入れた本格ミステリ物に なっています。内容的には、読者層にあわせたレベルになっています。マニアック向けとも、入門とも文字通り少年読者向けとも言えます。
2011年08月03日
狙われた女<大谷羊太郎>
やや影の薄い私立探偵・花木シリーズなのかも知れない。しかし影が薄いので、気がつかないかも知れない。小説の主人公で探偵役は、別にいます。ただし 巻き込まれというか、素人探偵ですので頼りないというか、危なっかしい。実際にそこがサスペンスなのだろうか、疑う相手も見込み違いの連続です。 異なる要素を入れた、妙な構成になっています。
2011年08月03日
新参者<東野圭吾>
本作のドラマ化ですっかり有名になった警視庁の加賀恭一郎刑事のシリーズです。デビュー当時から、ゆっくり書かれていたシリーズです。途中、天下一やガリレオ の方が有名になった事もありますが、作品系列的にはこちらがメインです。長く練馬署にいた加賀が、日本橋署に移ってきてそこの人々と過ごしながら、事件 を解決して行きます。
2011年08月09日
孤狼<堂場瞬一>
鳴沢了シリーズの4作目です。小説的にはほぼ単独になっています。登場人物的には、シリーズの前の作品と弱い相関があります。人物と語られなかった事に関して です。鳴沢は青山署に所属ですが、本庁のある部署の人物から特命で練馬北署の今刑事とコンビで調査します。そこで過去に登場した人物、現在の関係する人物を 巻き込んで次第に、事件は大きくなって行きます。何故鳴沢が、選ばれたのか・・・。
2011年08月09日
魔女<樋口有介>
ガーデニングプランナーの早川美波の恋人で就職浪人の山口広也が主人公です。広也は、上昇指向でテレビキャスター志望の姉・山口水穂から、大学時代の 広也のガールフレンドの安彦千秋の火災死を調べる事を依頼される。まるで中世の魔女のように焼け死んだ千秋の死に不審を抱いて特ダネを狙ったのだ。広也は 千秋の事を調べるうちに何も知らなかった彼女の近づいて行く。
2011年08月09日
石の繭 警視庁1課11係<麻見和史>
医学知識を含む本格作品の作者が、警視庁を舞台に組織調査の警察小説の舞台で、新米刑事の如月塔子の眼から、仲間の行動を描く。しかし構成的には、 警察小説を背景にした本格推理といえるし、謎の中心は医学的な謎でもある。しかも、警察関係の組織にも関係する事が多数絡んできます。ミッシングテーマ と意外な犯人に如何にたどりつくでしょうか。
2011年08月15日
この世にひとつの本<門井慶喜>
ひとりの書家が行方不明になった。昔、活版印刷が生まれてから本の量産が可能になったが、まだ書道家は存在する。絵画も存在する。いずれも複製・量産を 拒否しているのだろうか。しかし文化は、印刷という複製技術で進歩した。印刷会社の主人公たちが出会った謎には、印刷とたったひとつしかない書物の謎が 背景にあった。
2011年08月15日
「萩原朔太郎」の亡霊<内田康夫>
初期の岡部警部シリーズの1作です。萩原朔太郎の詩のような死体が見つかる。30年前の出身地の事件が関係している様だった。しかし、捜査中に連続して 事件が起きる。萩原朔太郎の詩がまるで亡霊のように、ついてまわる。
2011年08月15日
GOSICKs6<桜庭一樹>
クリスマス休暇の前の学園では、イベントのリビング・チェス大会が行われる。それでもいつもの通りの、主人公のふたりが過去の事件を思い出す。それは 色々な謎を解き明かしてゆくものだった。シリーズ完結長編の前の、過去の謎を解き明かす連作集です。
2011年08月21日
暗い鏡の中に<ヘレン・マクロイ>
無理も非論理も、小説の書き次第で読者をその気で読ませるというのが読書後の感想です。学校の教師の解雇という事から始まる、謎ともいえない謎です。 それから次々に判明する真実?、その単純な結論はとても納得出来ないものです。しかし、そこからの展開が残っていました。
2011年08月21日
香菜里屋を知っていますか<北森鴻>
多くの客に少なからず影響を与えた、居酒屋・香菜里屋のマスターが店をしめて、姿を消すまでが書かれています。準レギュラーや周辺のゲストの総登場ですが 謎は推測のままです。いつかは続編を期待したいのですが、作者の急逝でそれも無くなりました。謎を残した完結篇となりました。
2011年08月21日
メルカトルかく語りき<麻耶雄嵩>
登場作で死んだメルカトル探偵が、以降に活躍しています。木更津や美袋という、周辺の登場人物は、そのキャラクターのあくの強さに影がうすくなりがちです。 題名通りに、メルカトルが好き放題に語り続けます。
2011年08月27日
寒椿ゆれる<近藤史恵>
同心・玉島千尋と女形・水木巴之丞等が主人公の捕物帖シリーズです。短編3作になっていますが、捕物帖の部分は独立していますが、登場人物の動きは 順番になっています。シリーズとしては、順番に読むのが無難です。捕物帖としては、本格ミステリの要素が強く、その部分だけで楽しむ事も出来ます。他の 部分が邪魔と言われると、そもそも捕物帖の連作としての意味がなくなるので、たぶんどうしようもないでしょう。科学捜査がないからという面は、いくらかは 有りそうです。
2011年08月27日
失踪殺人事件<大谷羊太郎>
失踪というのは、普通は誰かがいなくなった方から見た状態が殆どです。失踪する側から見ても、結果は同じですが物語上はイメージと異なるでしょう。 それから3年目の殺人事件から、シリーズ探偵の八木沢警部の登場となり地道な本格捜査となります。当然、繋がりが存在しないと長編ミステリにはなりません。 過去に解決がある作品は多いが、本作はその過去から始まります。
2011年08月27日
夜の皇帝/深夜の魔王<高木彬光>
いわゆるジュブナイル・少年向きの作品です。雑誌連載のままでしたが、復刊されました。神津恭介も登場しますが、読者層から複雑な謎は避けており、また 終始登場するので、なかなか犯人を捕らえない名探偵となっています。これは、ジュブナイルでは普通の事で大人向けの作品と、同じ人物として読むと矛盾します。
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2011/08に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。