推理小説読書日記(2011/06)
2011年06月04日
ルナティックガーデン<太田忠司>
SFミステリです。長編ですが、連作が最後に長編になる作品に近い構成です。ただし、正確には長編の個々の章が短編としても読めると言えます。 庭師として著名な人の弟子になっている、女性が主人公です。師匠を通して頼まれたのは、なんと月のはずれにある老人たちの施設に庭を造る事です。 設計は師匠が行っていますが、月への土等の持ち入れが禁止されたり、消毒された死んだ土だったりします。一方でその場所には不思議なものが存在 している様です。そしてそこに集まった老人は、地球で地位と金を得たが何かに傷ついた者ばかりです。主人公は老人の傷を解決して、不思議なもの の正体にたどり着きます。片方は幻想SFの世界です。
2011年06月04日
波紋<堂場瞬一>
警視庁失踪課の高城賢吾は、すっかりやる気をなくした室長の阿比留の影響で困っています。失踪課初めての過去の事件に取り組みます。まともに 取り組む状態なのは、事件に餓えていた明神のみ。捜査が進むと失踪人絡みで色々な企業と一族と、発明の事情が出てきます。そこに届いた失踪人から の脅迫状、それは何を意味するのか。
2011年06月04日
宮崎龍宮伝説の殺人<大谷羊太郎>
内緒で宮崎へ旅行した男女は神話のふるさとを巡りますが、途中で男性は兄から内緒で借りたオペラグラスを盗まれます。兄はそれで、何かを行っていた らしいが、その後で殺されてしまいます。オペラグラスを盗まれた事が関係しているのか。一方で女性の家にもややこしい事情がある様です。自殺に見える 事件を八木沢警部が推理して、意外な証拠が見つかります。
2011年06月10日
四十八人目の忠臣<諸田玲子>
新聞連載小説が1年で終了です。題名から判るように赤穂浪士の忠臣蔵が題材です。47人以外に、スポットを当てるのは最近の傾向です。 古いネタにならないように、かつ伝奇小説にもならない様にです。従って、作者の想像が多いものの歴史小説です。そもそも、多くの家来のなかで47人 だけは歌舞伎の世界です。別に48人目に意味はなく、47人以外という意味です。ただしちょっと意表でした。
2011年06月10日
悪果<黒川博行>
大阪のヤクザシリーズのハードボイルドが知られる作者ですが、主人公をその関係担当の刑事の変えての警察小説です。勿論、一匹狼的?なふたりが 主人公で、ネタとゆすりと情報源としのぎとが揺れ動く世界を描いています。ハードボイルドスタイルでも、大阪はひと味違います。
2011年06月10日
水の中、光の底<平田真夫>
日常のSF幻想というカバー文です。幻想系SF短編集か、幻想小説かという境目の作品集です。不思議な世界に気がつくと、誘われている作品です。 おとなしく、日常のバーで始まり、意外な展開があります。理由も落ちもないで、幻想となります。SFなのかは判りません。
2011年06月16日
殺人者の街角<アリンガム>
キャンピオンが登場しますが、役目がよくわからないです。この作者によくある、判りにくさが目立ちます。連続殺人犯が、次第に追い詰められて行く サスペンスというとシンプルですが、描きかたによるとストーリーを楽しむよりも、作者の気まぐれに振り回される感もします。追い詰める側が悩んで どうするのか。ミステリなのだろうか。
2011年06月16日
雨の匂い<樋口有介>
複雑な家族構成の大学生が主人公です。ただ、学校へは行かず、アルバイトをしながら祖父と父の介護を行っています。何故、そんな事にから始まり 周囲はどうなっているのかが、次第に明らかになりそうですが、ある所以上には明らかにならずに離れています。そんな中で、父の代わりに引き受けた 塗装の仕事や、色々な出会いがあります。恋愛でしょうか、それとも異質の感情でしょうか。
2011年06月16日
柳生十兵衛秘剣考<高井忍>
主人公は、柳生十兵衛です。そして、もう一人の主人公で視線役が毛利玄達という剣豪・・実は女剣客です。柳生十兵衛は、毛利玄達と戦い刀を使わず 鉄扇で勝ったとか?。それ以来の知り合いらしい。この二人が、幾人かの剣豪と出会いそして、後世に伝わる話の真相を明らかにしたり、明らかになったり します。連作集ですが、多彩な内容を含む傑作です。真相は、まげられて伝わる。
2011年06月22日
インディアン・サマー騒動記<沢村浩輔>
普通の本格と、日常の謎派の中間的な連作集です。探偵役はややあいまいな設定です。ただし、主人公・佐倉はいつも登場します。たぶん意識的に 狭い範囲にならないように書いた連作でしょう。色々なタイプの作品を集めてバランスを取った連作型長編なのかも知れません。
2011年06月22日
蝙蝠館の秘宝<高木彬光>
いわゆるジュブナイルであり、題名が異なる形で紹介された事があります。名探偵・神津恭介が登場して、謎の館を中心にしたいくつかの謎を解きます。 昭和25年頃の懐かしいスタイルと内容ですが、ジュブナイルを加味すると意外と最近でも見かける内容にも思えます。
2011年06月22日
ヒンデンブルク号の殺人<コリンズ>
パニック小説+ミステリ+知名登場人物の作品です。「聖者」で知られているチャータリスが主人公です。時代小説的な面も含めて全体には、サスペンス色 があります。既存の事件ですので、結果はだいたい分かっていてサスペンスは、ちょっと違うかも知れませんが、混合風味の作品です。
2011年06月28日
暁英<北森鴻>
夭折の作者の、未完中断した実質の絶筆作品です。明治開花の時代に日本に来たイギリスの建築家と、出会った天才絵師・河鍋暁齋とが主人公です。当時の 来日者は、表向きの目的の他にも別の目的があった。それと同時に、明治政府を観察する立場にあった。イギリスで学んだ建築と、気候の異なる日本の建築には ことなる設計方針が必要であった。そして、建造された鹿鳴館の謎は・・・絶筆未完。
2011年06月28日
漱石先生の事件簿 猫の巻<柳広司>
夏目漱石の「吾輩は猫である」を舞台にした、ミステリ連作です。主人公は先生の家に居候している書生の私です。変人の先生と、猫に関わる事件は多数 原作に描かれています。それを素材に、ミステリ的な肉付けをしたり展開したり、解釈したりで進みます。ユーモアミステリ的な雰囲気があります。
2011年06月28日
聖少女<倉橋由美子>
昭和40年に発表された作品です。形態は小説内の、手記???小説なのか??という形です。交通事故でひとり生き残った少女は記憶喪失になった。そして 彼女が残した、手記なのか小説なのか・・何か不明の文書を理解して、少女の過去を調べる主人公という設定です。その部分は、ミステリ的ですがその内容は 現実なのか、あるいは妄想・小説なのか・・いずれにしても危険な内容です。
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2011/06に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。