推理小説読書日記(2011/05)
2011年05月05日
ちあき電脳探偵社<北森鴻>
亡くなった作者の著書が、遺作を含めて出版>文庫化されています。しかしこれは、作者がデビュー当時に連載した、ジュブナイルです。 まだ作者の名前が知られてない頃の作品であり、これまで単行本化されていませんでした。小学生のちあきが、謎を解くという連作集です。 コンピュータを駆使する現代的な少年少女探偵団の話です。
2011年05月05日
丑の刻参り<小杉健治>
ミステリ的には、法廷物と相撲物をそして時代人情物を、デビュー時から書いていた作者です。折からの時代小説ブームに、捕物帳を書く 事はほぼ必然的な事です。しかし、主人公が変わった設定です。元罪人の3兄弟が一人の名岡っ引きを演じます。頭脳明晰な長男・力自慢の 次男・そして佐平次を演じる外見だけ好青年の三男です。同心の命で、三男が表にたつ形で活躍を見せつけますが、それは芝居だから色々生じます。
2011年05月05日
銀婚式<篠田節子>
新聞小説の連載は続けて、読むのは大変ですが、日曜版はまとまった量なので読み続けられます。元々、ミステリ度は薄い作者ですが新聞連載 となるとより希薄です。主人公の夫婦が別れてしまいますので、題名が誰の?という展開です。仕事人間の主人公だが、分かれてから仕事を辞め 地方の三流大学で生徒のために一生懸命になるが、気がつくと分かれた元妻と子供はより問題がある生活にある事に気づきます。
2011年05月11日
豪華客船エリス号の大冒険<山口芳宏>
凝った設定と大がかりな背景の本格ミステリです。登場人物もストーリーもそれらしく進行します。そのまま、着地すれば面白い作品になった 可能性が有るのですが、船が沈没して漂流して島に流れ着く進行はがっかりです。意表とも言えますが、古い作者都合の作品にも見えて来ます。 無理な設定にしすぎたかと思います。義手探偵もやや違和感あります。
2011年05月11日
婚約<倉橋由美子>
「鷲になった少年」「婚約」「どこにもない場所」の3作からなる短編集です。登場人物名はやはり記号化されています。作りもののエンターティ メントみ慣れた読者でも、記号と抽象的世界と、カフカやサルトル(らしいがこちらは読んでいない)の世界が背景に登場するので、読者も選ぶかの ごとくです。だから、かえって離れられないとも言えます。
2011年05月11日
狩眼<福田栄一>
幅広いジャンルを書く作者ですが、本格的な警察小説です。警察組織と何故かそこからはみ出そうとする男、それを理解しようとする男が所轄に やって来ます。連続殺人事件の捜査で、主人公の語り手は刑事課長からその相方に指名されて、報告を依頼される。しかし、それも限界を超えて しまうが、・・・。オーソドックスな面とそれに伴うサプライズを、堅実に描きます。
2011年05月17日
悪魔の口笛<高木彬光>
名探偵・神津恭介の登場するジュブナイルです。設定とか、登場人物とかの細部に判りやすくという狙いがあります。しかし全体的には、サスペンス 冒険要素を含めた本格ミステリです。むしろ、まじめ過ぎるくらいに本格的です。若い読者にどのように受け止められたのかは、やや興味があります。 ただし、そこを考慮すると大人も楽しめる内容です。
2011年05月17日
巨人たちの星<ホーガン>
「星を継ぐ者」からのシリーズ第3作目です。主に自然科学系の話が、社会科学に以降した感があります。時間のスケールが桁ちがいに大きいですし 、地球人自体が謎の中心ですから他人事ではないですね。とにかく大きな謎が多数存在するSF本格ミステリです。ただし、日常の常識は全く関係ない 世界です。
2011年05月17日
殺意の宝石箱<>
「女性ミステリー作家傑作選1」です。登場作家は、青柳友子・井口泰子・今邑彩・加納朋子・桐野夏生・栗本薫・黒崎香E小池真理子・小泉貴美子です。 やや、最近の作家が多いですが、全3巻の最初です。女性作家がミステリを書く事が多くなったのは、やはり最近といえるのでしょう。
2011年05月23日
殺人者を葬れ<福田洋>
新宿の風俗探偵・月野が主人公のオムニバス連作短編集です。歌舞伎町のよろず相談というくらいですから、色々な依頼が舞い込みます。事件は、次々と 異なる内容に変わって行きます。なんとなく、世渡りする一匹狼という主人公の解決方法も多彩になります。
2011年05月23日
午前三時の殺人者<大谷羊太郎>
発端はコンビニ強盗だが、そこに絡んだ人物・目撃者が欲を持って関わる所から、複数の企みの思惑が乱れて進みます。サスペンスの常道ですが、 その狙いとしては、無難な作品といえます。誰が誰を脅迫するのか、警察は絡んでくるのか。
2011年05月23日
嘘をもうひとつだけ<東野圭吾>
この作者のレギュラーキャラクターとしては、一番古いのですが漸く有名になりつつある、加賀刑事の練馬署時代の短編集です。 奇を狙わないオーソドックスな本格ミステリが楽しめます。逆に加賀のキャラクターは、あまり表面には出てきません。
2011年05月29日
無花果の実のなるころに<西條奈加>
中学2年生の主人公とその祖母が中心の連作集です。父の転勤で祖母と暮らすが、祖母は料理が出来ないので主人公の望がやっている。祖母は近所の 人気者で女性を中心に人が集まってくる。そんな環境で育った望は、しらずしらずにやや他の友達と違った性格みたいだ。料理名人と学校で知られ、 女生徒とも普通につきあう。イラストレーターの母の影響で、美術部なのだが。
2011年05月29日
五番目のコード<デヴァイン>
妙な題名ですが、微妙な意味のかかった原題の直訳で、変えると意味が限定されてしまいます。数字が入っているように、連続殺人です。しかも ミッシングリンク的な要素が強いです。それゆえに題名が微妙なのです。被疑者が探偵役という設定もまた微妙です。
2011年05月29日
猿神の呪い<川野京輔>
昭和35年の作品の復刻ですが、戦前か戦後直ぐの雰囲気です。現在も当時も、やや微妙な内容だったのだと思います。伝奇小説・怪談・ホラー?。 それでミステリ?。33年から大きく変わったとも言われていますが、新しいタイプのミステリも登場しただけだったのでしょう。
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2011/05に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。