推理小説読書日記(2011/03)
2011年03月06日
パルタイ<倉橋由美子>
ミステリーにも広義のエンターテイメントにも入れられていない作家ですが、そもそも分類が出来ない特殊な作品です。幻想小説に近いが 思想小説なのかもしれません。奇想小説というと発想だけと取られかねないですが、もっと難しいです。ジャンル分けが、意味がない事の 証明でしょう。ただ、これらの短編を長編に水増しする他の作家の傾向が最近多く感じるのは、面白くないです。手抜きと言われても仕方ない です。
2011年03月06日
手で育てられた少年<オールディス>
サンリオSF文庫より。でもこれは、SFではないです。何とも言えない内容です。何故こんなのが、SFに紛れ込んだのか?。内容を書く気も しません。作者は、SF作家と思っていたが、非SFが採用されてしまったようです。
2011年03月06日
なぜ絵版師に頼まなかったのか<北森鴻>
明治初期を舞台に外国人探偵?役が登場します。短編集の題名が、有名な作品のもじりになっています。時代ミステリとしても本格としても 知識と工夫とが混ざっています。登場人物は、レギュラーになれる設定だったのに、これが最初で最後とは、本当におしいです。謎の設定も、背景 と時代を生かしたものになっています。
2011年03月12日
プラスチック・ラブ<樋口有介>
高校生・木村時郎が主人公の連作です。スタイルも色々で、ミステリ色も濃淡があります。青春小説として見ておれば、普通に展開します。 ただ、この主人公は多数の女性と付き合い過ぎか知り合い過ぎに見えます。話ごとに、異なる女性が登場するのが、高校生としてはおおすぎに 思います。表題作には、お馴染みの柚木草平が登場します。勿論視点は、主人公の高校生からです。プロの捜査に出会います。
2011年03月12日
破弾<堂場瞬一>
刑事・鳴沢了の第2作です。新潟の警察を辞めた主人公は、東京へ来て再度刑事になります。多摩に配置されてひまな生活であり、大きな事件 は担当させてもらえません。コンビを組むのは、犯人を射殺して過剰防衛かどうかで左遷気味の女刑事です。どこか鳴沢と似た状況です。大きな 捜査本部事件には入れてもらえず、二人だけで小さく見える事件を追いますが、その先には・・・。
2011年03月12日
泥棒貴族 裏金を探せ<大谷羊太郎>
新主人公達の登場が謳い文句になっています。本格味を薄くして、サスペンス色と犯罪小説とスパイ小説等の要素を加える狙いです。本作では、 誰が主人公か、どのような組織かが不明な所から始まり、判った所で終わるといういわゆる登場・紹介篇のスタイルです。逆に言えば、一番サスペンス 性は高いでしょう。ただ主人公?がちょっと頼りない。
2011年03月18日
深泥丘奇談<綾辻行人>
怪談というテーマに対して、作者のイメージで書いた短編を連作化して、長編化したという不思議な家庭を経た作品です。ホラー・幻想小説・ 怪談等の違いは何かと聞かれても、ちょっと困りまあす。どれも不思議な話です。恐怖という要素の有無で分けるのでしょうか。あるいは、日常 性の有無で分けるのでしょうか。いずれにしても、ちょっと奇妙な話です。
2011年03月18日
縄<岩下俊作>
非ミステリ作家の書いたミステリです。構成的に変わってはいますが、見かけの部分を分解してゆくとオーソドックスな話になりそうです。ただ 作者名と昭和33年発行という時代を考慮すると、逆にこれが意外に感じます。どのような位置づけするべきかが1作だけでは難しいです。複数の 捜査?側、複数の謎の要素、ドキュメント的な小説の終わり方など、妙に気になる作品でもあります。
2011年03月18日
もろこし紅遊録<秋梨惟喬>
中国の歴史を元に、架空の設定を重ねて、しかも架空の主人公達のグループ?の一人が主人公という、連作ではあるがシンプルでない作品群です。 連作集ですが、登場人物も時代も背景も異なります。ただそこに流れるひと筋が同じという、自称任侠小説です。中国という設定と、架空の背景が 加わるために、なかなか入りにくいが、一旦入ると抜けだしにくい作品です。
2011年03月24日
琥珀のマズルカ<太田忠司>
最近、SF設定のミステリが多い作者ですが、結構違和感がなくストーリーに入れます。整魂師・夢追い・そして・・、これらは一体何でしょうか。 そこから物語は始まります。そもそも題名が微妙です。「琥珀」「マズルカ」の関係は・・・。死後の世界?、あるいはパラレルワールド?、特殊能力 を持つ者から見た、より特殊能力を持つ者の話は、あまり記憶にないです。個人的には新鮮です。
2011年03月24日
ミスター・ディアポロ<レジェーン>
突然訪れた、名前もしらない作者と作品です。どうも本格ミステリはこの1作のみらしいです。喜ばせて、がっかりさせます。どこの国でも似た ケースはあるのですね。内容は、がちがちの古典的本格不可能犯罪ものです。こういう物を発掘するのは、どうやって行うのかも気になります。違う ジャンルしか読まない人には嫌われかねない程に徹底しています。怪しげな題名に躊躇したのに笑ってしまう。
2011年03月24日
天地驚愕のミステリー<>
バカミスのオリジナル・アンソロジーの文庫版です。2冊に分冊された前編に当たります。鳥飼否宇・北原尚彦・船越百恵・山口雅也が登場作家です。 鳥飼否宇の作品が強烈で、後はもう印象に残らないです。配列間違いか?。バカミスの定義を、編者の小山正が書いているのが、作品以上に面白い面も あります。
2011年03月30日
悪魔の火祭<高木彬光>
大前田英作夫妻のシリーズの長編です。離婚問題の依頼から始まり、刺青を掘られた女の登場とこの作者風に進みます。名探偵よりは、一般的な 私立探偵的な存在の主人公ですが、その活躍する世界もどこかそれ風です。作者の出身地の青森を最後の舞台に、探偵が動きまわるシリーズは、探偵 役が超人設定でないから前編登場できるのです。作者の別の世界とも言えます。
2011年03月30日
奪われた惑星<ハバート>
副題が「バトルフィールド・アース1」ト言います。このシリーズ名で判る様に、惑星とは地球です。SF作家として活躍後に、一種の宗教家になり 、あまり評判が良いとはいえなかったとされています。本作で復帰しましたが、どの程度本気かを疑う向きもあったらしいです。今で言う、スペース・ オペラのジャンルです。
2011年03月30日
雪よ荒野よ<佐々木譲>
作者は現在は、警察小説の大家ですが、過去には色々な作品を書いています。北海道は標津にいて、北を舞台にした作品が多いです。この連作集は 2作のみ同一主人公ですが、単発の短編集です。コンセプトは、開発期の北海道を同じく開拓時のアメリカの西部劇に見立てた活劇です。インディアン の悲劇は、アイヌの悲劇に置き換えています。都会で銃を撃ちまくる作者もいますが、開拓時代の北海道という事で、意外と素直に楽しめます。
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2011/03に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。