推理小説読書日記(2011/02)
2011年02月03日
マーシャン・インカ<イアン・ワトスン>
火星改造計画という壮大な話が中心にあります。そもそも火星には生物体がいないと言う考えがありましたから、たてられたものです。 しかし、それが正しかったのか・・・。一方、アンデス山脈に火星探査機が墜落します。そこは、地球上でも環境が特殊な地域です。高度に よる独特の気候ですが、それがどこか似ている・・火星にです。そして墜落現場付近に起きたことは何か。ひとすじなわでは行かない展開に 発展して行きます。
2011年02月03日
鏡の迷宮、白い蝶<谷原秋桜子>
激アルバイターの美波シリーズの前日談の短編集としての2冊目です。美波シリーズのキャラクターが個々に分かれて登場します。その つなぎ役であり、本集の探偵役は「水原の老人」です。彼は美波シリーズには登場しないのですが・・。日常の謎派の作者ですが、その構成 は本格ミステリです。魅力的なキャラクターと、ひねった謎を楽しみましょう。
2011年02月03日
ソリトンの悪魔(上)<梅原克文>
日本推理作家協会賞受賞作ですが、何故か今まで読んでいませんでした。微妙なジャンルですが、近未来シュミレーション小説+SF+ 冒険小説+etcという内容です。ソリトンとは何か知っていますか、海上都市は・・・。その他にも色々な発明品が登場します。そして舞台は 日本と台湾の国境地帯の海の底です。水の性質は、判っているようなそうで無いような所が有りますが、そこに作者の空想が加わって謎の 物体?が登場します。そして関わる人間模様が絡みます。
2011年02月10日
ソリトンの悪魔(下)<梅原克文>
水が変質した生物?は、破壊性のあるものと、人間と親しくなるものがあります。ただし、その生物と話が通じるのは一部の秘密の装置を 操る人間だけです。外部の組織からはいやな圧力がかかる中で、誰が味方か敵かが判らない状況で、次々と危険に出会います。科学知識と、 政府・自衛隊・海上保安庁・隣国・民間企業の思惑と、情報不足の中でのミス判断が重なります。SF+シュミレーションの冒険小説は謎が一杯 です。
2011年02月10日
ウジェーヌ・ヴァルモンの勝利<ロバート・バー>
ホームズに対抗する形で登場した、ロバート・バーの短編集です。日本では1短編のみが色々な題名の訳で知られています。本著では「うっかり 屋協同組合」となっているその作品は、主人公の背景が判る短編集でより理解できるでしょう。全体に探偵談というよりも、地下鉄サムに近い ユーモア冒険話の趣があります。
2011年02月10日
木野塚佐平の挑戦だ<樋口有介>
ハードボイルドを夢見る老人探偵の木野塚佐平の、長編です。佐平は語り手で探偵役は助手の梅谷桃世が当たります。探偵が恋をして犯人が 見えないなどはこの主人公では当たり前の事です。全てが勘違いと妄想で積み重ねて話が展開します。そもそも、謎が多い助手の事を何も理解せず 自分の事だけしか見えていません。こんな、老年になりたくないとは思うがほれほど自由に老後を楽しめれば、かえって面白いだろうという気も します。話は、見かけよりも大きく大きく広がり収束するのか心配になりますが、桃世が見事に導くようです。
2011年02月16日
青龍の剣(上)<高木彬光>
時代伝奇小説です。偽占いの浪人が主人公ですが、そのまわりで次々と事件が起こります。複数の事件と多数の登場人物が入れ混じります。 何故か全てに、関係を持ってしまいます。この作者の伝奇小説としては、事件の多さと登場人物の多さでは相当に珍しい方と思います。実在?? の人物としては遠山左右衛門丞が登場しますが、おおむねは架空の人物のみです。
2011年02月16日
サウサンプトンの殺人<クロフツ>
本格推理で長編の倒叙形式でのアリバイ崩し・警察捜査を描いたこの作者は、「クロイドン発12時30分」が有名ですが、それに続いて 書かれた本作も、メインの犯人側とサブの探偵役を並行して描いています。そして、犯人側の複数の人物の真犯人はぼかしています。純粋の倒叙 形式のみの長編から、プラス面を求めたものと思います。
2011年02月16日
青龍の剣(下)<高木彬光>
町中から始まった事件は、大名・旗本へと広がります。伝奇小説の1パターンとなっています。そして、謎の家宝「青龍の剣」が登場します。 たぶん、この部分のアイデアから話を膨らませたものと想像しますがどうなのでしょうか。主人公としては、やや地味な設定ですが、関わる人物が 逆にあくが強い者ばかりで、やや伝奇小説としては異色設定ですが、伝奇小説の面白さでは本道の作品です。
2011年02月22日
奥州平泉殺人事件<大谷羊太郎>
東京三鷹署の八木沢警部シリーズですが、ほぼ全編に登場します。かなり本格度は高い作品です。東京・湯沢・平泉と別れた場所での殺人事件 は複雑に繋がります。そして協同で、捜査を進めます。事件の関連性がいくつかの解釈で揺れる中で、関わる人物は広がってゆきます。そこから 新たな可能性を見いだす事で意外な真実に到達します。トリッキーさと地道な捜査がかみ合った作品です。
2011年02月22日
放課後探偵団<>
似た題名の作品がありそうですが、オリジナルアンソロジーです。参加作者は、似鳥鶏・鵜林伸也・相沢沙呼・市井豊・梓崎優という新人です。 基本が学園舞台のミステリですが、全てがそのジャンルの作品とは言えません。でも、アンソロジー的には逆にバランスがとれていると思えます。 今後に本格デビュー予定の作家も含む異色のアンソロジーです。
2011年02月22日
郷愁という名の密室<牧薩次:辻真先>
ベテラン作家が登場人物の名義で1冊だけと思って発表した作品が好評という事で、リクエストに応えて書いた牧薩次名義の2作目です。 牧薩次の後書きにSFは無理でパラレルワールドが好きと書いていますが、どの様な違いがあるのでしょうか。舞台を、どのように受けとめるかは 読者まかせと言う事でしょうが、あおれが既に作者の狙いの中とも言えます。作品の舞台に戸惑いながら、ストーリー展開の手法に戸惑いながら はたして、読者はどこに着地させられるのでしょうか。
2011年02月28日
もう誘拐などしない<東川篤哉>
ユーモアミステリであり、本格ミステリでもあります。舞台は関門海峡を挟む門司と下関です。トリック小説でもありますが、一部は前例が あるようですが、応用は問題にしないで良いでしょう。舞台の場所がかなり重要な事は、やむを得ないとはいえ読者の土地勘で印象が変わる事は 仕方がないでしょう。しかし、ヤクザの娘の美女の登場は、あまりにも度々すぎる気もします。どれが最初か知りませんが、「セーラー服と機関銃」 でイメージは固まったと個人的に思います。
2011年02月28日
クリスマスのフロスト<ウイングフィールド>
翻訳時の評判はまずまず高かったと思いますが、遅れての読書です。警察小説ですが、冒険小説でおなじみのモジュラー式です。つまり複数の 事件が並行しておこり、関係するものと無関係なものが順次終わってゆくスタイルです。歴史的には新しい方ですが急に広がったので、今は珍しく ありません。主人公のフロストは、色々のくせのある探偵を混ぜたような奇妙な人物です。
2011年02月28日
四月の橋<小島正樹>
トリック小説・パズラーのイメージのある作者ですが、かなり異なる作品です。カヌーというスポーツを背景にすえて、主人公?警官の捜査が やや危なしげに進みます。このような時は、ユーモアで終わるか、非本格的に終わるか、別の名探偵が登場するかですが、本作は最後の展開です。 しかしいつになっても、女性に目が惑わされる主人公は存在し続けることを実感します。警察小説として読むと恐ろしい事です。
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2011/02に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。