推理小説読書日記(2010/12)
2010年12月03日
横浜・佐世保港灯り殺人事件<大谷羊太郎>
八木沢警部シリーズの1作です。過去の事件の被害者の甥が来日するという。当時の関係者は、彼の追求からある人物への疑惑 が思い出されるが、その当人が殺される。過去の事件と、現在の事件が絡む謎を関係者と八木沢が追います。そして二つが結びついた 時に真相が浮かびあがります。
2010年12月03日
虚栄の肖像<北森鴻>
若くして無くなったこの作家の未読作品が少なくなってゆくのが寂しいです。この3作からなる連作集の主人公は、絵画修復師の 佐月恭壱ですが自身も複雑な過去があります。そしてその人脈も・・・まだまだ書き継ぐ予定だった筈ですが、シリーズ最終作となり ました。絵画・修復は、贋作や鑑定が絡みます、そこには豊富な知識が必要ですが作者は次々とそれを繰り出します。
2010年12月03日
木野塚探偵事務所だ<樋口有介>
定年を迎えた主人公が、ハードボイルドに生きたいと願って選んだ職業が探偵だった。早速、準備にかかったものの、事件の依頼 は当然ながらこなかった。あちこちに広告を出した所、金魚新聞の読者から依頼が来た。喜ぶがそこには勘違いがありました。いや5作 の連作集全体が主人公の勘違いの集まりでしょう。
2010年12月09日
目撃者を捜せ!<パット・マガー>
題名通り、船中での事件に対して目撃者を捜す話です。勿論、探している人は目撃者の存在を信じており、かつその人が見つかれば 事件も解決するとも信じてもいます。何故、隠す、誰だろうかという展開です。でも、それは大変ですが、その後の保証もないのです。 推測から目撃者を捜しまわった結果は??。目撃者はいるのでしょうか、犯人は分かったのでしょうか。
2010年12月09日
太陽が死んだ夜<月原渉>
鮎川哲也賞受賞作、戦時中に有ったニュージーランドでの日本人捕虜の脱走事件とその後の不明な謎があります。その舞台とまった 土地にある女学校に主人公が入学してきます。そこで出会った友人達と恒例の行事・礼拝室へのこもりをはじめますが、悲惨な事件が 起こります。果たして、日本からの留学生とは、学校の修道女は、そして戦時中の謎の噂とは本当の事でしょうか。
2010年12月09日
湯布院殺人事件<内田康夫>
JRのフルムーン・キャンペーンに対して書かれた作品です。退職した法学者と妻が1週間の旅行に出かけますが、その先で事件に遭遇 します。全国の警察・検察等に多くの教え子たちがいるというシリーズになる設定ですが、ドラマ化は進んでも、小説は進みませんでした。 主人公のキャラや、設定は魅力的でシリーズに向いていると思います。浅見・竹村・岡部に続くシリーズ探偵になっても不思議はなかった ですが、そうとはならなかった様です。
2010年12月15日
千年岳の殺人鬼<二階堂黎人・黒田研二>
二階堂黎人は、合作が好きなようで複数のパートナーと合作を行っています。メリットは不明です。SFとホラーと叙述ミステリを混ぜた ような作品です。個々には前例がありますが、組み合わせは珍しいでしょう。ホラー風は、日本のミステリ特に初期には多いです。ダイレクト に出すと、それだけで古いという人もいると感じます。そのために作者は、背景・時代・ジャンル等を考慮するのでしょう。
2010年12月15日
スリランカから世界を眺めて<クラーク>
SFの巨匠のクラークは、スリランカを拠点として活躍して来ました。そのエッセイを集めたものです。日常からアイデアや執筆について 幅広く書いています。映画の制作で、アメリカに出かけた時の話もあります。「2001年宇宙の旅」です。何故スリランカか?というよりも 信仰的なスリランカの愛さへ感じます。
2010年12月15日
瀬田の唐橋殺人事件<大谷羊太郎>
年を取ると、昔の若い頃を思い出すようです。その思い出を元に琵琶湖方面へ向かった父が帰宅後に行方不明になります。昔の仲間 の事は知らないが探す手がかりは、旅行と目的の昔のバンド仲間のようです。もう、それぞれに子供がいる世代です。そのなかで色々な 人物に出会いますが、過去か現在のどちらかに関係がある人物が含まれているようです。
2010年12月21日
ボディ・メッセージ<安萬純一>
鮎川賞受賞作品です。舞台はアメリカ、これには日本では無理なため選ばれたでしょう。日本人はひとり登場しますが、怪しげです。 小説というよりも、散文で書かれたパズル的な作品です。従って、犯人と動機が苦労して書かれた事を感じます。そこの部分で評価が変わる でしょう。イメージは「占星術殺人事件」でしょうか。
2010年12月21日
神国崩壊<獅子宮敏彦>
二重構造の作品です。短編集が、最後で長編になります。中国の架空の王朝を舞台に、その歴史的に変わって行くなかでの謎が描かれ ます。架空の舞台で、歴史が相手ですから、ちょっと厄介な小説です。背景に関わる謎は除外して読むとまずまず楽しめます。長編構造は なかった方がすっきりしていたと思えます。
2010年12月21日
狩人は都を駆ける<我孫子武丸>
どれが最初か不明ですが、最近はやりのペット探偵です。京都のハードボイルド希望の主人公が、何故か動物探しの依頼ばかり受けます。 実際に、活劇もありますし相手が何でもミステリではありでしょう。一寸変わった主人公を書くのが好きな、この作者の1作のみでは、惜しい と思った探偵の連作集です。
2010年12月27日
横浜残照、殺意の米軍基地<金久保茂樹>
美代川麗子が主人公の、トラベルミステリーですが、ミステリ要素は後半わずかになり、旅行記・グルメレポート風になっています。 アリバイ崩しは評価不可能です、なぜならば東京地区限定のレアなトリックですから、東京はほとんど知らない者には判る筈がありません。 トラベルは多いですが、トラベルミステリーからは離れて行く様に感じます。
2010年12月27日
パニック・パーティ<バークリィ>
バークリィ最後のミステリというか、何故欧米のミステリ作家は後期になると、旅行・孤島・クルーザー物を書くのか不思議です。特に 日本の新本格もびっくり(時代はこちらだ先ですが)の孤島ものです。探偵が最初からいるのに、連続殺人が閉じられた空間で起きます。 まあ、誰も名探偵と言っていないのでかまわないのかも知れません。
2010年12月27日
火蛾<小泉迦十>
かって、メフィスト賞を受賞して本作を発表して、以降沈黙の作者です。外国それも、宗教の修行僧を主人公に、不思議な話を書いています。 リアリズムが行き詰まると全く逆方向に向かうのでしょう。ただ、本格ミステリの枠を残す試みはあるので、もっと書いて欲しい作者と思います。 ミステリの背景が日本の現代から、離れ始めた初期の作品とも言えるでしょう。勿論、もっと前にもあるでしょうが・・。
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2010/12に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。