推理小説読書日記(2005/11)
2005年11月1日
殺しにいたるメモ<ニコラス・ブレイク>
本作者の作品は長編は殆ど読んでいません。ただ色々な人が述べているのは、シリアスでど ちらかと言えば心理的あるいはサスペンス的本格派です。本作は、それとは異なり証拠・手 がかりをもとにロジックで解いてゆく内容です。その面では、個人的には好きな内容です。 ただ、解説によると例外的作品で通常は異なるとの事でやや残念です。 日本での訳が多い作者ですので、読んでいない私が珍しいのでしょうが、最初に読んだ作品 の印象がその後にも影響するならば、複雑な気持ちです。
2005年11月1日
人形幻戯<西澤保彦>
「チョーモンイン」シリーズの6冊目との事ですが、私にとってはこのシリーズは初めて読 みます。そのため登場人物がレギュラーかどうかが分からないので、とまどいもありますし 新鮮でもあります。本作者の作品はある程度よんでいますので、SF的設定は普通に読めます し楽しめます。SF的設定のシリーズ化はあきないのかの疑問もありますが、初めてなので、 何もいえません。ただ特別の人物や視点にとらわれていないので、短編集でもめりはりがあ り、シリーズでも継続できそうに思います。
2005年11月6日
怪盗クイーンと魔窟王の対決<はやみねかおる>
青い鳥文庫のシリーズです。奥深いとも、はちゃめちゃとも言える設定ですが、ここがこの シリーズの魅力でもあります。特に、クイーンシリーズは登場人物(含む人工知能)のキャ ラクターが毎回個性的で面白いです。「知育おもちゃ バランサー」も直接に関係無くても ストーリー的にはまっています。そして、何でも実際の活劇を撮影する主義の映画監督は、 まじで笑ってしまいます。特にラストの脱出シーンは極めつけです。孤立した空間を作るの に苦労している作家には、うらやましい限りの自由な空間設定です。
2005年11月6日
二人で泥棒を<E・W・ホーナング>
昔、予告だけされて出版されなかった、ラッフルズのシリーズの登場です。いささか妙な怪 盗コンビで作品としても軽量級のコント風です。オー・ヘンリー、ビーストン、マッカレー と同系統といえるでしょう。日本でも、戦前を主体に類似作風が多かったと思います。怪盗 物としては、相棒のバニーの性格が特徴でしょう。多くは、宿敵(敵役)とのやりとりにな りますが、本シリーズではコンビふたりの性格の差とそのやりとりが見所といえます。既に 続編も訳されておりますが、かなり待たされた感が強いです。
2005年11月12日
銀行総務特命<池井戸潤>
金融界を舞台に、情報とサスペンスを含めたミステリを書いている作者の短編集です。主人 公は総務特命の指宿修平で、途中から唐木怜が加わります。1作のみ唐木のみ登場する作品 があります。ミステリの醍醐味が知能犯対探偵にあるならば、金融の裏舞台での犯罪は多く は犯人が知能犯で、しかもいくつかは巧妙な詐欺です。これを見破る捜査はまさしく高級な 知能捜査であり、またコンゲームとしても読む事が出来ます。この興味ある舞台を自由に書 ける作者は貴重であり、一層の期待があります。
2005年11月12日
繭の夏<佐々木俊介>
第6回鮎川哲也賞佳作作品です。今頃、ハードカバーで読むのはかなり遅れています。次長 編が発表されて思い出したのが本当の所です。作品は姉と弟が出会った謎を探る内に過去の 事件にたどりついてゆくと言う内容です。特別なトリックは無いが、全体が丁寧にかつ二人 の性格と会話がうまく構成されており安心してよめるミステリとなっています。このふたり が見つけ出す謎にしてはやや違う事件で有って欲しい気もしますし、逆にアンバランス差が 意外性をもつのかもしれません。
2005年11月17日
昇進<ジョイス・ポーター>
ドーヴァー警部シリーズの第10作です。主人公は、怠け者で無能?なスコットランドヤー ドのドーヴァー警部とその部下でいつも上司に恵まれない不幸を嘆くマクレガー部長刑事で す。この警部がなぜ事件を解決できるかは、警部の手腕ではなく、小説の作者の手腕です。 どうしたら、運良く??解決すのかが見所です。昇進というからには、警部が昇進する訳で すが、なぜ無能な警部が昇進するのかがこの話しの見所です。第6感ではなく第7感で仕事 する??結果はなんと言ってよいやら・・。
2005年11月17日
長崎・ばてれん列車殺人号<辻真先>
トラベルライター瓜生慎シリーズの1作です。今回は妻の真由子も同伴です。第3セクター の松浦鉄道に「ウエデイングトレイン」が作られ、取材に訪れると例によって、事件が発生 します。事件の背景に、色々な事が見え隠れするという展開になります。なぜ、真由子の登 場が必要かは、過去のシリーズで真由子の事を知っていなければわからないですが、小説を 読む上では問題はありません。トラベルミステリーではなく、舞台が鉄道だけの本格ミステ リです。
2005年11月23日
結婚式殺人<鷲尾三郎>
古い本で、ぼろぼろです。昭和34年の出版ですが、昔はしばしばありましたが、目次を見 ると「結婚式殺人」という長編1作のみの様になっています。実際は中編1作と短編2作か らなる作品集です。昔は、作品集よりも長編の方が売れたのかも知れません。トリックはこ の作者ならではの強引さが目立ちます。このころの作品は再刊されることもないかわりに、 一部の人がかなり集めているように感じます。読むとがっかりしますが、飽きずにまた探し て読むのは、時代のノスタルジーでしょうか?。
2005年11月23日
Gの残影<小森健太朗>
歴史上の謎を作者の解釈を提示する形で小説化する試みは、かなり見られます。本作もその 1例らしいですが、最後まで読みかつ作者のインタビューも読んで始めて理解できます。何 故ならば、舞台と時代が私の知識外だからです。時代はロシア革命時代、謎の登場人物は誰 かの1解釈を示しながら話しが進みます。私は、この方面は知りませんのでGと言う人物が 仮面をかぶっており誰かを捜すという勘違いをしました。実際にGは存在したが、どの様な人 物か意見がまとまっておらず、その1解釈を提示した話しでした。
2005年11月29日
推定相続人<ヘンリー・ウエイド>
系図・相続問題は日本でも難しく分からないのに、ましてイギリスの名家ともなれば複雑怪 奇なる世界です。相続というと財産しか思いつきませんが、称号も相続する物です。そして それが別々の時もあると、もう分かりません。題名の推定相続人になるともう、お手上げで す。作者はそんな読者に配慮してか、倒叙形式にしてくれていますが、それでも大変です。 相続問題を除くと類例がある展開ですが、加わると謎深き展開になります。知らない世界だ から面白いのか、知っているとより面白いのかどうなのでしょう。
2005年11月29日
殺人魔術<梶龍雄>
この作者の短編集は、主人公別だったりテーマが同じだったり分かり易いように多くはまと められています。しかし、本作品集は統一された内容でなく広い内容の純短編集です。その 面では、やや本格度が高いとも言えますが、作者の特徴の色々な話しの展開や背景の取り込 みは消える事はありません。オーソドックスなテーマをひとひねりする、本格スタイルも健 在です。従って、1冊読むと、本格ミステリの色々なタイプや構成に出会うことが出来ます。 地味で堅実な作風と言われるゆえんです。
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殺しにいたるメモ<ニコラス・ブレイク>
本作者の作品は長編は殆ど読んでいません。ただ色々な人が述べているのは、シリアスでど ちらかと言えば心理的あるいはサスペンス的本格派です。本作は、それとは異なり証拠・手 がかりをもとにロジックで解いてゆく内容です。その面では、個人的には好きな内容です。 ただ、解説によると例外的作品で通常は異なるとの事でやや残念です。 日本での訳が多い作者ですので、読んでいない私が珍しいのでしょうが、最初に読んだ作品 の印象がその後にも影響するならば、複雑な気持ちです。
2005年11月1日
人形幻戯<西澤保彦>
「チョーモンイン」シリーズの6冊目との事ですが、私にとってはこのシリーズは初めて読 みます。そのため登場人物がレギュラーかどうかが分からないので、とまどいもありますし 新鮮でもあります。本作者の作品はある程度よんでいますので、SF的設定は普通に読めます し楽しめます。SF的設定のシリーズ化はあきないのかの疑問もありますが、初めてなので、 何もいえません。ただ特別の人物や視点にとらわれていないので、短編集でもめりはりがあ り、シリーズでも継続できそうに思います。
2005年11月6日
怪盗クイーンと魔窟王の対決<はやみねかおる>
青い鳥文庫のシリーズです。奥深いとも、はちゃめちゃとも言える設定ですが、ここがこの シリーズの魅力でもあります。特に、クイーンシリーズは登場人物(含む人工知能)のキャ ラクターが毎回個性的で面白いです。「知育おもちゃ バランサー」も直接に関係無くても ストーリー的にはまっています。そして、何でも実際の活劇を撮影する主義の映画監督は、 まじで笑ってしまいます。特にラストの脱出シーンは極めつけです。孤立した空間を作るの に苦労している作家には、うらやましい限りの自由な空間設定です。
2005年11月6日
二人で泥棒を<E・W・ホーナング>
昔、予告だけされて出版されなかった、ラッフルズのシリーズの登場です。いささか妙な怪 盗コンビで作品としても軽量級のコント風です。オー・ヘンリー、ビーストン、マッカレー と同系統といえるでしょう。日本でも、戦前を主体に類似作風が多かったと思います。怪盗 物としては、相棒のバニーの性格が特徴でしょう。多くは、宿敵(敵役)とのやりとりにな りますが、本シリーズではコンビふたりの性格の差とそのやりとりが見所といえます。既に 続編も訳されておりますが、かなり待たされた感が強いです。
2005年11月12日
銀行総務特命<池井戸潤>
金融界を舞台に、情報とサスペンスを含めたミステリを書いている作者の短編集です。主人 公は総務特命の指宿修平で、途中から唐木怜が加わります。1作のみ唐木のみ登場する作品 があります。ミステリの醍醐味が知能犯対探偵にあるならば、金融の裏舞台での犯罪は多く は犯人が知能犯で、しかもいくつかは巧妙な詐欺です。これを見破る捜査はまさしく高級な 知能捜査であり、またコンゲームとしても読む事が出来ます。この興味ある舞台を自由に書 ける作者は貴重であり、一層の期待があります。
2005年11月12日
繭の夏<佐々木俊介>
第6回鮎川哲也賞佳作作品です。今頃、ハードカバーで読むのはかなり遅れています。次長 編が発表されて思い出したのが本当の所です。作品は姉と弟が出会った謎を探る内に過去の 事件にたどりついてゆくと言う内容です。特別なトリックは無いが、全体が丁寧にかつ二人 の性格と会話がうまく構成されており安心してよめるミステリとなっています。このふたり が見つけ出す謎にしてはやや違う事件で有って欲しい気もしますし、逆にアンバランス差が 意外性をもつのかもしれません。
2005年11月17日
昇進<ジョイス・ポーター>
ドーヴァー警部シリーズの第10作です。主人公は、怠け者で無能?なスコットランドヤー ドのドーヴァー警部とその部下でいつも上司に恵まれない不幸を嘆くマクレガー部長刑事で す。この警部がなぜ事件を解決できるかは、警部の手腕ではなく、小説の作者の手腕です。 どうしたら、運良く??解決すのかが見所です。昇進というからには、警部が昇進する訳で すが、なぜ無能な警部が昇進するのかがこの話しの見所です。第6感ではなく第7感で仕事 する??結果はなんと言ってよいやら・・。
2005年11月17日
長崎・ばてれん列車殺人号<辻真先>
トラベルライター瓜生慎シリーズの1作です。今回は妻の真由子も同伴です。第3セクター の松浦鉄道に「ウエデイングトレイン」が作られ、取材に訪れると例によって、事件が発生 します。事件の背景に、色々な事が見え隠れするという展開になります。なぜ、真由子の登 場が必要かは、過去のシリーズで真由子の事を知っていなければわからないですが、小説を 読む上では問題はありません。トラベルミステリーではなく、舞台が鉄道だけの本格ミステ リです。
2005年11月23日
結婚式殺人<鷲尾三郎>
古い本で、ぼろぼろです。昭和34年の出版ですが、昔はしばしばありましたが、目次を見 ると「結婚式殺人」という長編1作のみの様になっています。実際は中編1作と短編2作か らなる作品集です。昔は、作品集よりも長編の方が売れたのかも知れません。トリックはこ の作者ならではの強引さが目立ちます。このころの作品は再刊されることもないかわりに、 一部の人がかなり集めているように感じます。読むとがっかりしますが、飽きずにまた探し て読むのは、時代のノスタルジーでしょうか?。
2005年11月23日
Gの残影<小森健太朗>
歴史上の謎を作者の解釈を提示する形で小説化する試みは、かなり見られます。本作もその 1例らしいですが、最後まで読みかつ作者のインタビューも読んで始めて理解できます。何 故ならば、舞台と時代が私の知識外だからです。時代はロシア革命時代、謎の登場人物は誰 かの1解釈を示しながら話しが進みます。私は、この方面は知りませんのでGと言う人物が 仮面をかぶっており誰かを捜すという勘違いをしました。実際にGは存在したが、どの様な人 物か意見がまとまっておらず、その1解釈を提示した話しでした。
2005年11月29日
推定相続人<ヘンリー・ウエイド>
系図・相続問題は日本でも難しく分からないのに、ましてイギリスの名家ともなれば複雑怪 奇なる世界です。相続というと財産しか思いつきませんが、称号も相続する物です。そして それが別々の時もあると、もう分かりません。題名の推定相続人になるともう、お手上げで す。作者はそんな読者に配慮してか、倒叙形式にしてくれていますが、それでも大変です。 相続問題を除くと類例がある展開ですが、加わると謎深き展開になります。知らない世界だ から面白いのか、知っているとより面白いのかどうなのでしょう。
2005年11月29日
殺人魔術<梶龍雄>
この作者の短編集は、主人公別だったりテーマが同じだったり分かり易いように多くはまと められています。しかし、本作品集は統一された内容でなく広い内容の純短編集です。その 面では、やや本格度が高いとも言えますが、作者の特徴の色々な話しの展開や背景の取り込 みは消える事はありません。オーソドックスなテーマをひとひねりする、本格スタイルも健 在です。従って、1冊読むと、本格ミステリの色々なタイプや構成に出会うことが出来ます。 地味で堅実な作風と言われるゆえんです。
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2005/11に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。