推理小説読書日記(2005/10)
2005年10月6日
殺人者は道化師<梶龍雄>
軽井沢夫人リラと相棒のパックのふたりが主人公の連作集です。素性は不明でやや妖しい。 基本は本格ですが、後期の作品で多く見られる恋愛風俗が多くみられます。本格でも全体に 軽いので背景と書き方によれば、現在の日常の謎派的なものにすることも可能だったとも思 えます。主人公が謎を持つのもしばしばみられますが、結局は断ち切れた感があります。表 題作は、何か間接的な意味を持つ様に見えますが実はそのものずばりの内容です。後期の梶 作品の平均的傾向作ですが、外部的に要請されたのか、本人の作風の結果は興味があります。
2005年10月6日
かくして殺人へ<カーター・デイクスン>
昔の抄訳の完全訳との事ですが、私は初めてです。それに新訳にしてはあまり読み易いとは 感じなかったです。そのせいかあるいは内容自体のためか、カー作品からイメージしている 内容とはかんり異質なものを感じました。解説に、ある有名な作品を意識しているとされて いますが、実はその作品が未読なのでそれが原因かもしれません。なぜなら、長編にする必 要を感じない作品に思えたからです。カーとしては薄味に感じましたが、内容の理解が不完 全なのかも知れません。
2005年10月12日
ルパンの消息<横山秀夫>
1991年の活字になっていない、作者のミステリの賞の応募作です。警察小説に新しい手 法を持ち込んだ作者ですが本作も組織としての警察の捜査が行われます。ただ、現実的かも しれませんが、やや多くの捜査官が登場しすぎた様にも感じます。謎を追うと、どんどん過 去に遡ってゆくのは、今の主流ですが本作ではそれがテーマですのであまり気にはしないで 良いでしょう。謎を追うという面からは、作者の作品のなかで一番本格に近いですが、それ から清張賞の受賞までの変化を見るのも興味があります。
2005年10月12日
朝はもう来ない<新章文子>
昭和36年のサスペンス風小説です。登場人物の計画する大小の犯罪が微妙に絡みあって、 展開してゆきます。題名は小説内の時間と、結末を予測させます。ただ、主人公が誰かは今 ならもっと分かりにくく書くかもしれません。謎はほとんどなく、偶然が重なりあう予想外 の展開を楽しむ作品となっています。日本のサスペンス小説の出発点での作品のひとつとし て読むべきでしょう。本作ではサスペンスは、テーマでも文体でも登場人物でもなく、ひた すら予想外の展開でもたらされています。
2005年10月16日
狐闇<北森鴻>
冬狐堂・宇佐見陶子シリーズの長編です。ゲストで蓮丈那智や越名集治等も登場します。資 料を駆使してと書きたいが、門外漢の私にはどこまでがありえる史実かさえ分かりません。 ただスケールの大きさと、細部まではりめぐらされた罠に驚かされるだけです。スケールを 大きくすると細部の謎に、仕掛けをし難くなります。本作もそうで、謎を解くのは難しいで すが、犯人を推測するのは容易です。しかし、作品全体のバランスを優先していくとやむを えない事です。立体感を感じさせる作者の世界からは、もう離れられません。
2005年10月16日
誰でもない男の裁判<A.H.Z.カー>
短編の名手の日本で編まれた独自の作品集です。幅広い作品が並んでいます。短編故に、訳 が複数で行われており、読みにくいものが混じっているのは仕方がないとも残念とも言えま す。新訳ほど読みにくいのも不思議です。背景に国や文化からくる価値観がありますので、 日本人にとってすぐにあるいは、全て理解出来ないと思いますが、それでも独自の世界は、 興味を与えてくれます。でも、文化の違いが残念に思います。作品数の少ない作者でも、訳 され紹介される事は読み継がれるには質の問題が絡む事を実感します。
2005年10月26日
猫丸先輩の空論<倉知淳>
ロジックが行き着く先が「空論」か?。たしかに、データ不足から必然性の有無をチェック しないロジックは空論でも仕方がないと言えるでしょう。本格ミステリの場合では一般に必 然性が求められますが、短編で少ない手がかりから一つの仮説を出す方法も一ジャンルとし て存在して良いと思います。読む方が、それを理解している必要がありますが・・。過去に は逆に空論をひにくったどんでん返し作品もありますが、データの不足の時の処理は作者の 作風で決まりますので、どちらが良いともいえません。
2005年10月26日
橋本五郎探偵小説選1<橋本五郎>
日本では、昭和初期にオー・ヘンリー、ビーストン、マッカレー等がよく読まれていたよう です。従って、書かれた作品にも同傾向の物が複数にあります。橋本五郎の作品もその系統 に繋がるといえます。コント風でユーモアと落ちがある小説です。作品はジャンルとしては 幅がありますが、文体やスタイルはほぼ一定と言えます。このような作者の作品がまとめら れる事はうれしいですが、全体を読むのはやや退屈ともいえます。色々な作者の中に1篇が 混ざっている状態がよいように思います。
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殺人者は道化師<梶龍雄>
軽井沢夫人リラと相棒のパックのふたりが主人公の連作集です。素性は不明でやや妖しい。 基本は本格ですが、後期の作品で多く見られる恋愛風俗が多くみられます。本格でも全体に 軽いので背景と書き方によれば、現在の日常の謎派的なものにすることも可能だったとも思 えます。主人公が謎を持つのもしばしばみられますが、結局は断ち切れた感があります。表 題作は、何か間接的な意味を持つ様に見えますが実はそのものずばりの内容です。後期の梶 作品の平均的傾向作ですが、外部的に要請されたのか、本人の作風の結果は興味があります。
2005年10月6日
かくして殺人へ<カーター・デイクスン>
昔の抄訳の完全訳との事ですが、私は初めてです。それに新訳にしてはあまり読み易いとは 感じなかったです。そのせいかあるいは内容自体のためか、カー作品からイメージしている 内容とはかんり異質なものを感じました。解説に、ある有名な作品を意識しているとされて いますが、実はその作品が未読なのでそれが原因かもしれません。なぜなら、長編にする必 要を感じない作品に思えたからです。カーとしては薄味に感じましたが、内容の理解が不完 全なのかも知れません。
2005年10月12日
ルパンの消息<横山秀夫>
1991年の活字になっていない、作者のミステリの賞の応募作です。警察小説に新しい手 法を持ち込んだ作者ですが本作も組織としての警察の捜査が行われます。ただ、現実的かも しれませんが、やや多くの捜査官が登場しすぎた様にも感じます。謎を追うと、どんどん過 去に遡ってゆくのは、今の主流ですが本作ではそれがテーマですのであまり気にはしないで 良いでしょう。謎を追うという面からは、作者の作品のなかで一番本格に近いですが、それ から清張賞の受賞までの変化を見るのも興味があります。
2005年10月12日
朝はもう来ない<新章文子>
昭和36年のサスペンス風小説です。登場人物の計画する大小の犯罪が微妙に絡みあって、 展開してゆきます。題名は小説内の時間と、結末を予測させます。ただ、主人公が誰かは今 ならもっと分かりにくく書くかもしれません。謎はほとんどなく、偶然が重なりあう予想外 の展開を楽しむ作品となっています。日本のサスペンス小説の出発点での作品のひとつとし て読むべきでしょう。本作ではサスペンスは、テーマでも文体でも登場人物でもなく、ひた すら予想外の展開でもたらされています。
2005年10月16日
狐闇<北森鴻>
冬狐堂・宇佐見陶子シリーズの長編です。ゲストで蓮丈那智や越名集治等も登場します。資 料を駆使してと書きたいが、門外漢の私にはどこまでがありえる史実かさえ分かりません。 ただスケールの大きさと、細部まではりめぐらされた罠に驚かされるだけです。スケールを 大きくすると細部の謎に、仕掛けをし難くなります。本作もそうで、謎を解くのは難しいで すが、犯人を推測するのは容易です。しかし、作品全体のバランスを優先していくとやむを えない事です。立体感を感じさせる作者の世界からは、もう離れられません。
2005年10月16日
誰でもない男の裁判<A.H.Z.カー>
短編の名手の日本で編まれた独自の作品集です。幅広い作品が並んでいます。短編故に、訳 が複数で行われており、読みにくいものが混じっているのは仕方がないとも残念とも言えま す。新訳ほど読みにくいのも不思議です。背景に国や文化からくる価値観がありますので、 日本人にとってすぐにあるいは、全て理解出来ないと思いますが、それでも独自の世界は、 興味を与えてくれます。でも、文化の違いが残念に思います。作品数の少ない作者でも、訳 され紹介される事は読み継がれるには質の問題が絡む事を実感します。
2005年10月26日
猫丸先輩の空論<倉知淳>
ロジックが行き着く先が「空論」か?。たしかに、データ不足から必然性の有無をチェック しないロジックは空論でも仕方がないと言えるでしょう。本格ミステリの場合では一般に必 然性が求められますが、短編で少ない手がかりから一つの仮説を出す方法も一ジャンルとし て存在して良いと思います。読む方が、それを理解している必要がありますが・・。過去に は逆に空論をひにくったどんでん返し作品もありますが、データの不足の時の処理は作者の 作風で決まりますので、どちらが良いともいえません。
2005年10月26日
橋本五郎探偵小説選1<橋本五郎>
日本では、昭和初期にオー・ヘンリー、ビーストン、マッカレー等がよく読まれていたよう です。従って、書かれた作品にも同傾向の物が複数にあります。橋本五郎の作品もその系統 に繋がるといえます。コント風でユーモアと落ちがある小説です。作品はジャンルとしては 幅がありますが、文体やスタイルはほぼ一定と言えます。このような作者の作品がまとめら れる事はうれしいですが、全体を読むのはやや退屈ともいえます。色々な作者の中に1篇が 混ざっている状態がよいように思います。
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2005/10に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。