推理小説読書日記(2005/09)
2005年9月4日
海野十三戦争小説傑作集<海野十三>
戦争小説とくに戦時前後の作品はどのように読めばよいのか悩むつらい作品が多い。しかし 科学者であり、ミステリと共にSF小説の父とも言える海野の作品は、他の多くの作品と違う アプローチから入り奇想天外な展開を見せるものが多く、今読んでも面白い。この本には、 不思議な武器発明家の金博士シリーズ・おなじみの帆村荘六物・ノンシリーズが含まれます。 戦争は技術を進歩させると言われるが、それは非常に危険な武器の発明をも意味します。 奇想に飾られていても全体を貫く思想は現在でも変わることはありません。
2005年9月4日
ニッポン硬貨の謎<北村薫>
エラリー・クイーンのパステーシュの外観を持っているが、中身は本格ミステリであり同時 にエラリー・クイーンの作品の評論・研究書でもあります。いくつかの有名な作品のネタば れが注意書きとともに含まれますが、まだ読んでいない作品が多くある人は先にそれらの作 品を読むことを薦めます。本作の面白さは取り上げられている作品をどの程度読んで理解し ているかにも大きく関係します。出来ればそれらの本が手元にあると申し分がありません。 しかし簡単には理解できない本格的評論であり再読が求められる。
2005年9月10日
ターフの罠<海渡英祐>
「本格競馬ミステリー」の肩書きがあります。競馬はミステリと相性がよいのか、海外では フランシス、国内では岡嶋二人等の多くの作品があります。独特のルールのある世界ですの で、詳しい人と私のようにそうで無い人と若干または大きな印象のギャップがあると思いま す。一番のポイントは、競走馬の価値が詳しく無い者には完全に理解できない事にあります。 そこを中心につかれるとなかなか、作品の世界にはいりこめません。しかし競馬小説のポイ ントとして必要な知識です。本作ではそれにドーピングが加わります
2005年9月10日
フレンチ警部と漂う死体<フリーマン・クロフツ>
残り少ない未訳作品の一つが刊行されました。内容はいつもの様に手堅い捜査による解決で す。どんでん返し狙いの強引な作品が多い最近では、落ち着きが感じられます。事件は二つ で、二つの毒を用いた毒殺事件、地中海へ入るジブラルタル海峡で起きた水死事件です。 フレンチは後者から登場して双方を解決します。船で観光しながら電報等で情報を入手して 解決してゆくのは、優雅です。しかし、そこはきっちりした謎の解明と証拠の入手があり、 ミステリの原点の感じがします。
2005年9月15日
てとろどきしん<黒川博行>
初期の大阪府警捜査1課深町班シリーズの本格ミステリ・警察小説の短編集です。主人公は 捜査班で事件によって話しの中心人物が変わります。この当たりはエド・マクベインの作品 に近いが、本格度は黒川作品が強い。そして、大阪弁でのかけあい漫才風の会話が特徴とい えます。なかなか全員が親しみのある捜査班です。ついでにその家族も含めて・・。本作が 書かれてからそれほど時間がたっていないが、登場する品物・風景・科学捜査の変化は激し いです。もはや修正できないし、その必要もないと思います。
2005年9月15日
伊豆・踊り子列車殺人号<辻真先>
トラベルライターの瓜生慎シリーズの書きおろしシリーズの1作です。特徴は、架空のイベ ントを作り、そこへ取材に行くと事件が起こる事でしょう。若干異なる雰囲気のあるトラベ> ルミステリになっています。本作では、家族が総出演、可能克郎も登場とサービス過剰です。 「伊豆の踊子」の扮装をした子供のカップルを選ぶイベントという内容です。 本格ミステリですが、コンパクトにまとまっており安定していますが、特別なびっくりはあり ません。
2005年9月22日
神様ゲーム<摩耶雄嵩>
子どもも読むミステリの「ミステリランド」の中の1冊です。内容は、本作者の世界を作っ ています。その面では充分に面白いのですが、かなり奥深い内容を含み大人でも簡単には、 理解できない所もあります。それに加えて基本設定部・・これははたして、子どもむきでし ょうか?。登場人物が子どもであっても、子ども向きのミステリとは直に言い難い例と思い ます。いや、最近の子どもは・・・、でしょうか?。寡作の作者の2年連続の発表を素直に 受け止める事にしましょう。
2005年9月22日
阿蘇惨劇道路<西東登>
1972年の作品です。丁度、本格が少なく社会派が多い時代でしょうか、背景に社会派的 要素を置き、全体はサスペンス調で、話しの流れの中に謎を仕掛けるという混成的な作品で す。作風か、時代の流れか、作者の迷いか、それとも単に実力か?。どれをとっても意欲的 と言うよりも中途半端な感じがします。本格ブームの直前の時代とはいえ、やや不本意な作 品に感じます。この後の流れが、どちらかに重点を置くことになったとすれば、過渡期の作 品といえます。
2005年9月30日
疑われざる者<シャーロット・アームストロング>
サスペンスを中心に、ユーモア・本格等広いジャンルの作品を書いた作者です。本作は初期 の作品で、サスペンスとの案内があります。しかし、妖しげな題名からしても本格味の強い 作品と思います。それに、どたばた的なユーモアはあまり感じる事がありません。題名が、 ひとつのミスデレクション的な働きがあるように感じました。訳はややぶっきらぼうで、も し原作にユーモアがあっても、訳にはあらまれにくいでしょう。
2005年9月30日
賢者はベンチで思索する<近藤史恵>
最近はやりの、短編連作が繋がって長編的になる連作集です。3作で1連作になっています が、第3作目のみは単独では本格ミステリにはなっていません。主人公の女性と、老人のキ ャラが面白いので続編も期待したいのですが、第3作の終わり方から双方が登場する作品は 難しいと思います。タイプは日常の謎派ですが、主人公の青春小説と老人のやや非日常的な 影の設定は少し異なる手法に感じます。
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海野十三戦争小説傑作集<海野十三>
戦争小説とくに戦時前後の作品はどのように読めばよいのか悩むつらい作品が多い。しかし 科学者であり、ミステリと共にSF小説の父とも言える海野の作品は、他の多くの作品と違う アプローチから入り奇想天外な展開を見せるものが多く、今読んでも面白い。この本には、 不思議な武器発明家の金博士シリーズ・おなじみの帆村荘六物・ノンシリーズが含まれます。 戦争は技術を進歩させると言われるが、それは非常に危険な武器の発明をも意味します。 奇想に飾られていても全体を貫く思想は現在でも変わることはありません。
2005年9月4日
ニッポン硬貨の謎<北村薫>
エラリー・クイーンのパステーシュの外観を持っているが、中身は本格ミステリであり同時 にエラリー・クイーンの作品の評論・研究書でもあります。いくつかの有名な作品のネタば れが注意書きとともに含まれますが、まだ読んでいない作品が多くある人は先にそれらの作 品を読むことを薦めます。本作の面白さは取り上げられている作品をどの程度読んで理解し ているかにも大きく関係します。出来ればそれらの本が手元にあると申し分がありません。 しかし簡単には理解できない本格的評論であり再読が求められる。
2005年9月10日
ターフの罠<海渡英祐>
「本格競馬ミステリー」の肩書きがあります。競馬はミステリと相性がよいのか、海外では フランシス、国内では岡嶋二人等の多くの作品があります。独特のルールのある世界ですの で、詳しい人と私のようにそうで無い人と若干または大きな印象のギャップがあると思いま す。一番のポイントは、競走馬の価値が詳しく無い者には完全に理解できない事にあります。 そこを中心につかれるとなかなか、作品の世界にはいりこめません。しかし競馬小説のポイ ントとして必要な知識です。本作ではそれにドーピングが加わります
2005年9月10日
フレンチ警部と漂う死体<フリーマン・クロフツ>
残り少ない未訳作品の一つが刊行されました。内容はいつもの様に手堅い捜査による解決で す。どんでん返し狙いの強引な作品が多い最近では、落ち着きが感じられます。事件は二つ で、二つの毒を用いた毒殺事件、地中海へ入るジブラルタル海峡で起きた水死事件です。 フレンチは後者から登場して双方を解決します。船で観光しながら電報等で情報を入手して 解決してゆくのは、優雅です。しかし、そこはきっちりした謎の解明と証拠の入手があり、 ミステリの原点の感じがします。
2005年9月15日
てとろどきしん<黒川博行>
初期の大阪府警捜査1課深町班シリーズの本格ミステリ・警察小説の短編集です。主人公は 捜査班で事件によって話しの中心人物が変わります。この当たりはエド・マクベインの作品 に近いが、本格度は黒川作品が強い。そして、大阪弁でのかけあい漫才風の会話が特徴とい えます。なかなか全員が親しみのある捜査班です。ついでにその家族も含めて・・。本作が 書かれてからそれほど時間がたっていないが、登場する品物・風景・科学捜査の変化は激し いです。もはや修正できないし、その必要もないと思います。
2005年9月15日
伊豆・踊り子列車殺人号<辻真先>
トラベルライターの瓜生慎シリーズの書きおろしシリーズの1作です。特徴は、架空のイベ ントを作り、そこへ取材に行くと事件が起こる事でしょう。若干異なる雰囲気のあるトラベ> ルミステリになっています。本作では、家族が総出演、可能克郎も登場とサービス過剰です。 「伊豆の踊子」の扮装をした子供のカップルを選ぶイベントという内容です。 本格ミステリですが、コンパクトにまとまっており安定していますが、特別なびっくりはあり ません。
2005年9月22日
神様ゲーム<摩耶雄嵩>
子どもも読むミステリの「ミステリランド」の中の1冊です。内容は、本作者の世界を作っ ています。その面では充分に面白いのですが、かなり奥深い内容を含み大人でも簡単には、 理解できない所もあります。それに加えて基本設定部・・これははたして、子どもむきでし ょうか?。登場人物が子どもであっても、子ども向きのミステリとは直に言い難い例と思い ます。いや、最近の子どもは・・・、でしょうか?。寡作の作者の2年連続の発表を素直に 受け止める事にしましょう。
2005年9月22日
阿蘇惨劇道路<西東登>
1972年の作品です。丁度、本格が少なく社会派が多い時代でしょうか、背景に社会派的 要素を置き、全体はサスペンス調で、話しの流れの中に謎を仕掛けるという混成的な作品で す。作風か、時代の流れか、作者の迷いか、それとも単に実力か?。どれをとっても意欲的 と言うよりも中途半端な感じがします。本格ブームの直前の時代とはいえ、やや不本意な作 品に感じます。この後の流れが、どちらかに重点を置くことになったとすれば、過渡期の作 品といえます。
2005年9月30日
疑われざる者<シャーロット・アームストロング>
サスペンスを中心に、ユーモア・本格等広いジャンルの作品を書いた作者です。本作は初期 の作品で、サスペンスとの案内があります。しかし、妖しげな題名からしても本格味の強い 作品と思います。それに、どたばた的なユーモアはあまり感じる事がありません。題名が、 ひとつのミスデレクション的な働きがあるように感じました。訳はややぶっきらぼうで、も し原作にユーモアがあっても、訳にはあらまれにくいでしょう。
2005年9月30日
賢者はベンチで思索する<近藤史恵>
最近はやりの、短編連作が繋がって長編的になる連作集です。3作で1連作になっています が、第3作目のみは単独では本格ミステリにはなっていません。主人公の女性と、老人のキ ャラが面白いので続編も期待したいのですが、第3作の終わり方から双方が登場する作品は 難しいと思います。タイプは日常の謎派ですが、主人公の青春小説と老人のやや非日常的な 影の設定は少し異なる手法に感じます。
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2005/09に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。