推理小説読書日記(2005/08)
2005年8月4日
追尾の連繋<山村直樹>
双葉推理小説シリーズといえば、昭和40年台の代表作がかなり集まっています。本作もそ の中の1作です。ただ作品数も少なく、あまり知られていない作家です。現在に限らなくと も複数の話しが平行して進む作品はしばしばあります。本作は、これをステレオの様に2チ ャンネルにわけ、明確にしています。トリックも考えられていますが、本格好きの人にはあ まり受けない解決になっており残念とも言えます。複数の話しで進むのが、メタではなく本 格として必然の作品と感じるものにはまだ巡り会っていません。
2005年8月4日
レイトン・コートの謎<アントニー・バークリー>
少数の作品しか紹介されていなかったバークリーがここ数年の間にほぼ全訳されました。 特異な個性とユーモアが日本で理解されるのに時間がかかったのでしょう。1930台の黄 金期にすでに、このような作者が存在した事がようやく理解されたと言うべきでしょう。迷 う・間違う探偵は逆に生かすのが難しいと思います。それは、読む方にも責任があるのでし ょう。作者は推理小説の奥行きの深さと面白さと、難しさを教えてくれるようです。本作は まだまだというスタート作ですが、既に片鱗は有ります。
2005年8月10日
切れない糸<坂木司>
作者4冊目の本は、新シリーズです。大学卒業を前にまだ就職が決まっていない時に突然に 訪れた父の死・そして家業のクリーニング屋を再開するために、アルバイトの形で始めた外 廻りの仕事が始まります。仕事がそのまま、得意先の家庭事情に関わるために日常の色々な 小さな事件に巻き込まれてゆきます。まさしく、色々な家庭の日常が登場します。しだいに 仕事の難しさと重要さを理解してゆく主人公が友人と謎を解明してゆきます。新シリーズと いうからには、続編を期待しましょう。
2005年8月10日
名探偵は最終局に謎を解く<戸松淳矩>
1980年頃に書かれたジュブナイルの3作目で現在の最終作です。ただし本作のみが単行 本になるのが始めてです。相撲・野球の後は将棋です。今回、一部加筆変更されているとさ れています。シリーズとしての統一性が取れた形です。よりシリーズ化されたと言えるでし ょう。読者層から、複雑なものは期待できませんが、軽いユーモアミステリと言えるでしょ う。
2005年8月14日
紀ノ上一族<久生十蘭>
1970年頃に全集が出されたが、実際は全部ではなく半数程度の作品だった。1975年 から全集未収録作品集が刊行されたが、その中の1冊です。独自の世界を持った作者でミス テリはその一部でしかありません。本集も個人的にはミステリとは思わないのですが、最近 読んだミステリと称する本の複数がこの本の内容と類似内容を扱っており、これもミステリ にはいるのかと思う次第です。戦時に移住した一族の波乱の生き様を描いた作品を中心に濃 い内容の作品集です。ただし謎ときではありません。
2005年8月14日
三人の名探偵のための事件<レオ・ブルース>
ビーフ刑事のち私立探偵のデビュー作です。他の作者の作品に登場する名探偵と思われる三 人の人物が登場してそれぞれの方法で解決を示します。最後に物的証拠を元にビーフが真相 を述べる展開になります。いわゆる、多元解決の作品です。趣向も楽しいですが、謎自体も なかなか良くできており、本格ファンには楽しみな作品です。いやむしろ、本格ファン度が 高い人ほど面白さが分かると思います。
2005年8月23日
誰のための綾織<飛鳥部勝則>
本格ミステリにメタミステリの外枠をまとった作品です。この構成自体は歴史が古いですが 本作の場合は外枠の部分にかなりの比重があるように感じました。でも微妙です。本作では 本格の部分と、外枠のメタの部分のどちらを評価するのかが重要となるでしょう。作品の題 からは、作者は外枠に重点を見ているように思います。個人的には中心の本格部で勝負して 欲しい感があります。
2005年8月23日
赤い靴少女殺人事件<梶龍雄>
1986年の作品です。新本格と呼ばれる作品群の近い時期です。題名と内容・本格との拘 り・法律・病気・探偵役と構成としてはかなり内容が揃っています。特別な独創はないもの の楽しめる内容と言えるでしょう。ただ本格はいつも多くの読者がいるとは言えず、本作も 古い時代の作家が書いた本格というだけで広く読まれていないのは残念です。
2005年8月29日
密室は眠れないパズル<氷川透>
作者名=作品中名探偵=推理作家=氷川透シリーズの初期作品です。初めてという事で、こ の構図を表面に出していません。すなわち、作者と同一名の人物の役割が後半まで隠されて います。その結果、作中の他の人物との多重解決的な趣があります。反面、探偵役がいかに も頼りなく、パズルーでありながら思考過程が殆どなくまるで思いつきで解決にたどりつい た感もあります。一度しか使えないとはいえ、利点・欠点が共存しています。
2005年8月29日
空のオベリスト<デイリー・キング>
三部作の最終作ですが日本では、2・3・1の順で訳されたのでやや不満もあります。フェ アプレイの一つの方向と言われる「手がかり索引」が厳密に採用されていることで、有名な シリーズです。ただ翻訳をそのまま載せられなく、本のページ振り分けでも索引がかわるの ので原作に有っても翻訳で省略されるのが多いのは残念です。本作は完訳です。
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追尾の連繋<山村直樹>
双葉推理小説シリーズといえば、昭和40年台の代表作がかなり集まっています。本作もそ の中の1作です。ただ作品数も少なく、あまり知られていない作家です。現在に限らなくと も複数の話しが平行して進む作品はしばしばあります。本作は、これをステレオの様に2チ ャンネルにわけ、明確にしています。トリックも考えられていますが、本格好きの人にはあ まり受けない解決になっており残念とも言えます。複数の話しで進むのが、メタではなく本 格として必然の作品と感じるものにはまだ巡り会っていません。
2005年8月4日
レイトン・コートの謎<アントニー・バークリー>
少数の作品しか紹介されていなかったバークリーがここ数年の間にほぼ全訳されました。 特異な個性とユーモアが日本で理解されるのに時間がかかったのでしょう。1930台の黄 金期にすでに、このような作者が存在した事がようやく理解されたと言うべきでしょう。迷 う・間違う探偵は逆に生かすのが難しいと思います。それは、読む方にも責任があるのでし ょう。作者は推理小説の奥行きの深さと面白さと、難しさを教えてくれるようです。本作は まだまだというスタート作ですが、既に片鱗は有ります。
2005年8月10日
切れない糸<坂木司>
作者4冊目の本は、新シリーズです。大学卒業を前にまだ就職が決まっていない時に突然に 訪れた父の死・そして家業のクリーニング屋を再開するために、アルバイトの形で始めた外 廻りの仕事が始まります。仕事がそのまま、得意先の家庭事情に関わるために日常の色々な 小さな事件に巻き込まれてゆきます。まさしく、色々な家庭の日常が登場します。しだいに 仕事の難しさと重要さを理解してゆく主人公が友人と謎を解明してゆきます。新シリーズと いうからには、続編を期待しましょう。
2005年8月10日
名探偵は最終局に謎を解く<戸松淳矩>
1980年頃に書かれたジュブナイルの3作目で現在の最終作です。ただし本作のみが単行 本になるのが始めてです。相撲・野球の後は将棋です。今回、一部加筆変更されているとさ れています。シリーズとしての統一性が取れた形です。よりシリーズ化されたと言えるでし ょう。読者層から、複雑なものは期待できませんが、軽いユーモアミステリと言えるでしょ う。
2005年8月14日
紀ノ上一族<久生十蘭>
1970年頃に全集が出されたが、実際は全部ではなく半数程度の作品だった。1975年 から全集未収録作品集が刊行されたが、その中の1冊です。独自の世界を持った作者でミス テリはその一部でしかありません。本集も個人的にはミステリとは思わないのですが、最近 読んだミステリと称する本の複数がこの本の内容と類似内容を扱っており、これもミステリ にはいるのかと思う次第です。戦時に移住した一族の波乱の生き様を描いた作品を中心に濃 い内容の作品集です。ただし謎ときではありません。
2005年8月14日
三人の名探偵のための事件<レオ・ブルース>
ビーフ刑事のち私立探偵のデビュー作です。他の作者の作品に登場する名探偵と思われる三 人の人物が登場してそれぞれの方法で解決を示します。最後に物的証拠を元にビーフが真相 を述べる展開になります。いわゆる、多元解決の作品です。趣向も楽しいですが、謎自体も なかなか良くできており、本格ファンには楽しみな作品です。いやむしろ、本格ファン度が 高い人ほど面白さが分かると思います。
2005年8月23日
誰のための綾織<飛鳥部勝則>
本格ミステリにメタミステリの外枠をまとった作品です。この構成自体は歴史が古いですが 本作の場合は外枠の部分にかなりの比重があるように感じました。でも微妙です。本作では 本格の部分と、外枠のメタの部分のどちらを評価するのかが重要となるでしょう。作品の題 からは、作者は外枠に重点を見ているように思います。個人的には中心の本格部で勝負して 欲しい感があります。
2005年8月23日
赤い靴少女殺人事件<梶龍雄>
1986年の作品です。新本格と呼ばれる作品群の近い時期です。題名と内容・本格との拘 り・法律・病気・探偵役と構成としてはかなり内容が揃っています。特別な独創はないもの の楽しめる内容と言えるでしょう。ただ本格はいつも多くの読者がいるとは言えず、本作も 古い時代の作家が書いた本格というだけで広く読まれていないのは残念です。
2005年8月29日
密室は眠れないパズル<氷川透>
作者名=作品中名探偵=推理作家=氷川透シリーズの初期作品です。初めてという事で、こ の構図を表面に出していません。すなわち、作者と同一名の人物の役割が後半まで隠されて います。その結果、作中の他の人物との多重解決的な趣があります。反面、探偵役がいかに も頼りなく、パズルーでありながら思考過程が殆どなくまるで思いつきで解決にたどりつい た感もあります。一度しか使えないとはいえ、利点・欠点が共存しています。
2005年8月29日
空のオベリスト<デイリー・キング>
三部作の最終作ですが日本では、2・3・1の順で訳されたのでやや不満もあります。フェ アプレイの一つの方向と言われる「手がかり索引」が厳密に採用されていることで、有名な シリーズです。ただ翻訳をそのまま載せられなく、本のページ振り分けでも索引がかわるの ので原作に有っても翻訳で省略されるのが多いのは残念です。本作は完訳です。
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2005/08に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。