推理小説読書日記(2005/05)
2005年5月5日
光る鶴・吉敷竹史の肖像<島田荘司>
「吉敷竹史の肖像」は中編「光る鶴」、短編「吉敷竹史、18歳の肖像」、対談、資料等か らなります。ただ2作品と対談以外は、いまさらの感じで資料と言っても特別なものはあり ません。短編と対談も付属品の感じで「光る鶴」の為の本といえるでしょう。 「光る鶴」は、島田荘司・吉敷竹史の世界そのもので量より質を感じさせます。最近の長大 作品の中で、きっちりまとまった中編は逆に印象にのこります。我が道を行く吉敷でも休暇 の旅先であれば個人捜査も不自然ではありませんし、小説の長さと釣り合ったトリックと、 冤罪というテーマも生きてきます。
2005年5月5日
モップの精は深夜に現れる<近藤史恵>
結婚で終わったと思われたモップの天使・キリコの再登場です。今回は4作品ともに舞台 も登場人物も異なります。最終話は前回の登場人物です。キリコが読者には謎でなくなって も1−3話の登場人物には謎の人物に感じるでしょう。だれしも悩みがあり、そこで事件に 会うとめげてしまいます。しかし、キリコと接する事で次第に前向きになり最後に解消しま す。天使から精に呼び名は変わっても少しも魅力はかわらないです。まだ続編が期待できる 内容なのはうれしいです。
2005年5月13日
見えない人影<氷川透>
各務原氏の逆説シリーズ?の2作目です。「ロジックか屁理屈なのか」と帯に書いてありま ますが、単なる無知またはずぼら人間のように思います。トリックとしては無理のある面白 みのないものです。登場人物の能力はしばしばトリックに使用されますが、それが探偵役で あると急にアンフェアと感じます。職業柄、事件が学校関係に限られますし探偵役の設定に 作者の誤算があるように感じます。語り手の設定はまずまずで、自然に小説に入れますが事 件が起きてからは、急につまずく気がしました。
2005年5月13日
信州・高原列車殺人号<辻真先>
一体いくつシリーズ・探偵役があるか分からなくなっている作者ですが、最近の類似題名の 作品群もシリーズと言えるでしょう。探偵役はおなじみのトラベルライターの瓜生慎です。 今回は妻の真由子と息子の竜もゲスト?出演します。話しは作者おなじみの鉄道とやや奇想 になりかけの設定での事件です。がちがちの本格とは言えないですが、やはり本格です。登 場人物のユーモアな性格が作者の特徴で独特の作風となっています。
2005年5月19日
QZの迷宮<柄刀一>
単独で発表した作品を構成しなおして、連作形式にした短編集です。趣向として優れたもの もありますが、本作品集のように通常の短編集にした方が良かったと思う失敗もかなり有り ます。よほど優れたアイデアがあるか、個々の短編に自信がないかのどちらかでしょう。 本集は連作形式にしたメリットがなく、本格推理だったものがメタミステリに変わり面白み が変わってしまいました。読者によって好みは変わりますが、私個人はがっかりする内容で 短編は個々の本格推理で書いて欲しいと思います。
2005年5月19日
ワイルド・ソウル<垣根涼介>
かなり話題になった作品ですが、本格推理ではなくしかも謎と言えるものが存在しない作品 です。これも広義のミステリに入るのかと思うと、気がめいります。作者が書きたいのがミ ステリではないのですから、不満を言われても作者も迷惑とは思います。ミステリー大賞か らデビューした肩書きは、もうはずすべきでしょう。作者にとっても読者にとっても迷惑で 邪魔としか思えません。
2005年5月28日
左手首<黒川博行>
作者はデビュー後から現在までに作品の内容が多様に変化しています。初めて読む人は何を 選ぶかを注意する必要があります。本書は、犯罪小説の短編集です。警察小説ではないです 。最近は連作がはやっていますが、統一した雰囲気は当然ありますが、連作ではありません。 各作品ごとに異なる世界を取り扱っています。ただどれも面白いです。それでは、次にもう 1冊読むと全く異なる世界・ジャンルにぶつかる可能性が高いです。しかしそれも面白い、 そういう作者です。
2005年5月28日
風水火那子の冒険<山田正紀>
山田正紀はジャンルも広く、作品数も非常に多いです。その全貌はとても掴みきれません。 最近、ミステリが増えている事は事実です。風水兄妹といってもよくはしりません。本作は 神出鬼没の風水火那子の登場する短編集です。いや中編集かも、作者も言っているし。この 作者の作品はどこか強引さがありますが、魅力的な謎やテーマを提示してくれます。最初は SF作家の余技と見る人もあった様ですが、今はミステリの中央にいます。
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光る鶴・吉敷竹史の肖像<島田荘司>
「吉敷竹史の肖像」は中編「光る鶴」、短編「吉敷竹史、18歳の肖像」、対談、資料等か らなります。ただ2作品と対談以外は、いまさらの感じで資料と言っても特別なものはあり ません。短編と対談も付属品の感じで「光る鶴」の為の本といえるでしょう。 「光る鶴」は、島田荘司・吉敷竹史の世界そのもので量より質を感じさせます。最近の長大 作品の中で、きっちりまとまった中編は逆に印象にのこります。我が道を行く吉敷でも休暇 の旅先であれば個人捜査も不自然ではありませんし、小説の長さと釣り合ったトリックと、 冤罪というテーマも生きてきます。
2005年5月5日
モップの精は深夜に現れる<近藤史恵>
結婚で終わったと思われたモップの天使・キリコの再登場です。今回は4作品ともに舞台 も登場人物も異なります。最終話は前回の登場人物です。キリコが読者には謎でなくなって も1−3話の登場人物には謎の人物に感じるでしょう。だれしも悩みがあり、そこで事件に 会うとめげてしまいます。しかし、キリコと接する事で次第に前向きになり最後に解消しま す。天使から精に呼び名は変わっても少しも魅力はかわらないです。まだ続編が期待できる 内容なのはうれしいです。
2005年5月13日
見えない人影<氷川透>
各務原氏の逆説シリーズ?の2作目です。「ロジックか屁理屈なのか」と帯に書いてありま ますが、単なる無知またはずぼら人間のように思います。トリックとしては無理のある面白 みのないものです。登場人物の能力はしばしばトリックに使用されますが、それが探偵役で あると急にアンフェアと感じます。職業柄、事件が学校関係に限られますし探偵役の設定に 作者の誤算があるように感じます。語り手の設定はまずまずで、自然に小説に入れますが事 件が起きてからは、急につまずく気がしました。
2005年5月13日
信州・高原列車殺人号<辻真先>
一体いくつシリーズ・探偵役があるか分からなくなっている作者ですが、最近の類似題名の 作品群もシリーズと言えるでしょう。探偵役はおなじみのトラベルライターの瓜生慎です。 今回は妻の真由子と息子の竜もゲスト?出演します。話しは作者おなじみの鉄道とやや奇想 になりかけの設定での事件です。がちがちの本格とは言えないですが、やはり本格です。登 場人物のユーモアな性格が作者の特徴で独特の作風となっています。
2005年5月19日
QZの迷宮<柄刀一>
単独で発表した作品を構成しなおして、連作形式にした短編集です。趣向として優れたもの もありますが、本作品集のように通常の短編集にした方が良かったと思う失敗もかなり有り ます。よほど優れたアイデアがあるか、個々の短編に自信がないかのどちらかでしょう。 本集は連作形式にしたメリットがなく、本格推理だったものがメタミステリに変わり面白み が変わってしまいました。読者によって好みは変わりますが、私個人はがっかりする内容で 短編は個々の本格推理で書いて欲しいと思います。
2005年5月19日
ワイルド・ソウル<垣根涼介>
かなり話題になった作品ですが、本格推理ではなくしかも謎と言えるものが存在しない作品 です。これも広義のミステリに入るのかと思うと、気がめいります。作者が書きたいのがミ ステリではないのですから、不満を言われても作者も迷惑とは思います。ミステリー大賞か らデビューした肩書きは、もうはずすべきでしょう。作者にとっても読者にとっても迷惑で 邪魔としか思えません。
2005年5月28日
左手首<黒川博行>
作者はデビュー後から現在までに作品の内容が多様に変化しています。初めて読む人は何を 選ぶかを注意する必要があります。本書は、犯罪小説の短編集です。警察小説ではないです 。最近は連作がはやっていますが、統一した雰囲気は当然ありますが、連作ではありません。 各作品ごとに異なる世界を取り扱っています。ただどれも面白いです。それでは、次にもう 1冊読むと全く異なる世界・ジャンルにぶつかる可能性が高いです。しかしそれも面白い、 そういう作者です。
2005年5月28日
風水火那子の冒険<山田正紀>
山田正紀はジャンルも広く、作品数も非常に多いです。その全貌はとても掴みきれません。 最近、ミステリが増えている事は事実です。風水兄妹といってもよくはしりません。本作は 神出鬼没の風水火那子の登場する短編集です。いや中編集かも、作者も言っているし。この 作者の作品はどこか強引さがありますが、魅力的な謎やテーマを提示してくれます。最初は SF作家の余技と見る人もあった様ですが、今はミステリの中央にいます。
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2005/05に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。