推理小説読書日記(2005/02)
2005年2月4日
清里高原殺人別荘<梶龍雄>
本作の発表は1988年です。従って現在、新本格と呼ばれている人が登場している時期で す。この人たちの作品には、閉ざされた空間や館がしばしば登場します。クリステイの「そ して誰もいなくなった」の影響と見れば、特徴とは言えません。そして本作も、それに分類 される内容です。別荘に集まり、外と連絡を閉ざす目的、館の仕掛けと外的な要素、それを 含めての意外な結末とミステリの要求する要素はほとんど満たしています。それでありなが らあまり知られていない作品になっているのは、作品内容ではなく外的要素としか考えられ ません。
2005年2月7日
超・誘拐入門<清水義範>
ユーモア・サスペンスとカバーに紹介されています。たしかに、ユーモアのセンスは充分に ありますが、ミステリとしての構成もしっかり構築されています。誘拐方法、奪った金銭の 処理方法、結末の持って行き方など、がちがちの本格として構成されていませんが、作風と 書き方によっては可能な内容と思います。作者としては、最後の結末を自然にする為に、本 作のようなユーモア小説と読まれるような構成にしたと思います。ミステリは実際に読んで 見ないと分からないとよく言われますが、本作もそのように感じます。
2005年2月11日
高松発寝台特急「瀬戸」の殺人<峰隆一郎>
外観はトラベルミステリーですが、それに拘った内容ではありません。捜査側が力が強すぎ て、謎と捜査にサスペンス味もロジック味も無くなっているのが残念です。特に興味のみの 捜査と推測での結末は、構成に必然性がないだけにおしいと感じます。しばしば言われる、 捜査側の自由な移動(旅行?)に納得性を持たせる狙いかとも思いますが、別の不自然さを 発生させていると思います。題名を含めて、アリバイ崩しと見せかけた工夫も不自然さに隠 れてしまった様です。
2005年2月15日
密室の鎮魂歌<岸田るり子>
第14回鮎川賞受賞作品です。新人というよりは、既に高い完成度のある中堅の作品に感じ ます。謎とトリックもあり、直接的ではないがロジックもあります。逆に新人賞特有のあや うさが無く、気負いとかインパクトには欠けます。多くの人に愛される作品と思いますが、 のめり込むタイプでは無いと思います。しかし、密室や刺青などの細かい謎の積み重ねで、 構成された作品ですので、ともすれば一発ネタの多い最近の傾向と一線をなす本流の本格と 言えるでしょう。
2005年2月18日
メトロポリスに死の罠を<芦辺拓>
本格ミステリでのデビューと、歴史小説・怪獣?小説へと続く作品群で読者を迷わす作者で す。本作は、「自治体警察」シリーズの1冊ですが、内容は作者好みの内容を贅沢にいれた 感想の難しいものです。趣向を凝らしているのか、趣向倒れかは読者によって異なるでしょ う。色々なネタを1冊に入れるのは勿体ないと感じるか、この作者はたぶんネタがなくなる 事はないであろうと思うのかも読者によって異なります。ミステリ界では作風で分ける傾向 がありますが、これは拒否されているように感じます。
2005年2月24日
マリオネット園<霧舎巧>
あかずの扉研究会シリーズの1作です。最終的には、いつもの雰囲気になるのですが、遊び のみの前半、不自然な犯人の登場(きがつかない設定は無理があります)等ややネタきれの 感も無きにしもあらずです。メンバーの特徴の設定をそのままトリックにするならば、それ をほとんど知らない人が信じる必然性の説明が必要ですがありません。結果として、正統的 新本格というよりも、自分自身の作品のパロデイを書いた気がします。この作以降、別のシ リーズに移行しますが、はたして戻ってこれるのでしょうか?。
2005年2月26日
殺しはエレキテル<芦辺拓>
橋本宗吉を主人公にした、江戸時代の科学を取り入れた捕り物帳です。同じ趣向は、久生十 蘭や光瀬龍にもありますが、そこに山田風太郎作品的な著名登場人物を登場させます。短編 ですし、捕物帳ですので本格ではあっても、薄味であることには違いありません。むしろ、 作者得意の豊富な知識がちりばめられているのを楽しむのが、まともな楽しみ方でしょう。 ただ後書きでいくつかの捕物帳を上げていますが、一番近いと思われる光瀬作品が入ってい ないのは作者の見落としでしょうか。
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清里高原殺人別荘<梶龍雄>
本作の発表は1988年です。従って現在、新本格と呼ばれている人が登場している時期で す。この人たちの作品には、閉ざされた空間や館がしばしば登場します。クリステイの「そ して誰もいなくなった」の影響と見れば、特徴とは言えません。そして本作も、それに分類 される内容です。別荘に集まり、外と連絡を閉ざす目的、館の仕掛けと外的な要素、それを 含めての意外な結末とミステリの要求する要素はほとんど満たしています。それでありなが らあまり知られていない作品になっているのは、作品内容ではなく外的要素としか考えられ ません。
2005年2月7日
超・誘拐入門<清水義範>
ユーモア・サスペンスとカバーに紹介されています。たしかに、ユーモアのセンスは充分に ありますが、ミステリとしての構成もしっかり構築されています。誘拐方法、奪った金銭の 処理方法、結末の持って行き方など、がちがちの本格として構成されていませんが、作風と 書き方によっては可能な内容と思います。作者としては、最後の結末を自然にする為に、本 作のようなユーモア小説と読まれるような構成にしたと思います。ミステリは実際に読んで 見ないと分からないとよく言われますが、本作もそのように感じます。
2005年2月11日
高松発寝台特急「瀬戸」の殺人<峰隆一郎>
外観はトラベルミステリーですが、それに拘った内容ではありません。捜査側が力が強すぎ て、謎と捜査にサスペンス味もロジック味も無くなっているのが残念です。特に興味のみの 捜査と推測での結末は、構成に必然性がないだけにおしいと感じます。しばしば言われる、 捜査側の自由な移動(旅行?)に納得性を持たせる狙いかとも思いますが、別の不自然さを 発生させていると思います。題名を含めて、アリバイ崩しと見せかけた工夫も不自然さに隠 れてしまった様です。
2005年2月15日
密室の鎮魂歌<岸田るり子>
第14回鮎川賞受賞作品です。新人というよりは、既に高い完成度のある中堅の作品に感じ ます。謎とトリックもあり、直接的ではないがロジックもあります。逆に新人賞特有のあや うさが無く、気負いとかインパクトには欠けます。多くの人に愛される作品と思いますが、 のめり込むタイプでは無いと思います。しかし、密室や刺青などの細かい謎の積み重ねで、 構成された作品ですので、ともすれば一発ネタの多い最近の傾向と一線をなす本流の本格と 言えるでしょう。
2005年2月18日
メトロポリスに死の罠を<芦辺拓>
本格ミステリでのデビューと、歴史小説・怪獣?小説へと続く作品群で読者を迷わす作者で す。本作は、「自治体警察」シリーズの1冊ですが、内容は作者好みの内容を贅沢にいれた 感想の難しいものです。趣向を凝らしているのか、趣向倒れかは読者によって異なるでしょ う。色々なネタを1冊に入れるのは勿体ないと感じるか、この作者はたぶんネタがなくなる 事はないであろうと思うのかも読者によって異なります。ミステリ界では作風で分ける傾向 がありますが、これは拒否されているように感じます。
2005年2月24日
マリオネット園<霧舎巧>
あかずの扉研究会シリーズの1作です。最終的には、いつもの雰囲気になるのですが、遊び のみの前半、不自然な犯人の登場(きがつかない設定は無理があります)等ややネタきれの 感も無きにしもあらずです。メンバーの特徴の設定をそのままトリックにするならば、それ をほとんど知らない人が信じる必然性の説明が必要ですがありません。結果として、正統的 新本格というよりも、自分自身の作品のパロデイを書いた気がします。この作以降、別のシ リーズに移行しますが、はたして戻ってこれるのでしょうか?。
2005年2月26日
殺しはエレキテル<芦辺拓>
橋本宗吉を主人公にした、江戸時代の科学を取り入れた捕り物帳です。同じ趣向は、久生十 蘭や光瀬龍にもありますが、そこに山田風太郎作品的な著名登場人物を登場させます。短編 ですし、捕物帳ですので本格ではあっても、薄味であることには違いありません。むしろ、 作者得意の豊富な知識がちりばめられているのを楽しむのが、まともな楽しみ方でしょう。 ただ後書きでいくつかの捕物帳を上げていますが、一番近いと思われる光瀬作品が入ってい ないのは作者の見落としでしょうか。
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2005/02に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。