推理小説読書日記(2004/12)
2004年12月3日
人形の家殺人事件<藤桂子>
藤雪夫>藤雪夫・藤桂子合作>藤桂子の流れが表面にありますが、トリック作家の父と、ラ イター出身の娘を比較する事に意味はないし、作品の連続性もないでしょう。父はトリック 主体の不可能犯罪、娘は人間性の中から出発する犯罪を描きます。本作は連続殺人とミッシ ングリンクテーマに結びつけています。結果として少し長めですが破綻しそうなテーマをか ろうじてまとめています。これを見ると話題性はありましたが、合作の期間が無かった方が 良かった様に感じます。先入観はどうしてもありがちです。
2004年12月7日
久山秀子探偵小説選1<久山秀子>
大正・昭和初期の作者は、度々再刊されているか、全くされていないか極端に分かれます。 この時代の作家の選集が組まれていますが、作品の珍しさは別にして作者としては、本作者 は最も紹介されにくいでしょう。アンソロジーにはいくつか採られていますが、今回本書を 読むと意識的に探偵小説色の強い作品が選ばれていることが分かります。地下鉄サムの日本 版と言われていましたが、作品の幅が広く極めて異色の作品を書いていた事が分かります。 次の2を読むと全貌を知るわけで、マニア必読とも言える選集です。
2004年12月11日
生首に聞いてみろ<法月綸太郎>
2004年は数年以上ぶりで長編を発表した作家が複数いる年となりました。綾辻行人・矢 作俊彦・摩耶雄嵩・原僚・そしてこの作家です。短編で推理作家協会賞を受けていますが、 長編は「ふたたび赤い悪夢」以来です。久しぶりというだけでなく、作品内容も生首と生首 彫刻との絡みで大きな展開を見せます。目的を追求する事で新たな謎が生まれ、驚愕の結末 とは言えなくても論理的思考と伏線で、結論が導かれる過程は作者の特長です。結果として 長くまたされた読者を裏切らない作品になっています。
2004年12月15日
浮気妻は名探偵<梶龍雄>
刑事と浮気妻シリーズの短編集です。浮気妻の伏山エリ子は推理だけで無く、勝手に調査に 出かけますので、安楽椅子探偵ではありません。事件の概要を簡単に伝えて短編にする為に 刑事とのコンビにしただけです。事件もこのコンビ向けが多いことは事実です。内容は犯人 当てからアクション的なものまで、一応は本格推理ですがかなり幅は広いです。
2004年12月20日
霊南坂殺人事件<矢島誠>
東京・名古屋・京都と事件がおきますが、全て自殺で処理されます。納得ゆかない新米ライ ターとその夫と、刑事が別々に事件を追います。そして偶然の出会いから共同で捜査が進み ます。それぞれ圧力がかかり、悩みながらの独断捜査です。このあたりは現実的とみるか、 やはり、小説的と見るかは個人で異なるでしょう。トリックは部分的には前例があるものも あり、しかも繰りかえされるのでやや弱いと言えるでしょう。しかし、捜査側が弱いのでト リックやアリバイを崩しても状況証拠で犯人の告白が無ければ解決しないのは物たりません。
2004年12月24日
銀行狐<池井戸潤>
銀行・金融を舞台にした短編集です。舞台と得手・不得手がありますが、非常にレベルの高 い作品集です。別に知識を得るために読む必要はありませんが、自然と色々な事を知った気 になります。複雑な世界ですが、知能犯や詐欺の格好の舞台です。勿論、作者はそれ以外の 推理小説のテーマも書いていますが、どこかでこの世界が絡んできます。基本的には(若干 の例外あり)主人公が変わりますが雰囲気はどこかにています。新しい世界の書き手だけに 読み出したらやめられない魅力があります。
2004年12月28日
霧舎巧傑作短編集<霧舎巧>
作者のデビュー前からの作品を集めた物らしいです。見た目は、色々ありです。本の題名か らも、趣向があるとは思えませんが、最近はやりの狙いが盛り込まれています。登場人物が あかずの間研究会のメンバーで、ばらばらに登場します。書きおろしは最終の1作のみです。 ミステリーというものは、まとめの作品でどうにも出来ると感じます。個々の作品について かなり丁寧に、若干の強引さもありでかかれていると感じます。
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人形の家殺人事件<藤桂子>
藤雪夫>藤雪夫・藤桂子合作>藤桂子の流れが表面にありますが、トリック作家の父と、ラ イター出身の娘を比較する事に意味はないし、作品の連続性もないでしょう。父はトリック 主体の不可能犯罪、娘は人間性の中から出発する犯罪を描きます。本作は連続殺人とミッシ ングリンクテーマに結びつけています。結果として少し長めですが破綻しそうなテーマをか ろうじてまとめています。これを見ると話題性はありましたが、合作の期間が無かった方が 良かった様に感じます。先入観はどうしてもありがちです。
2004年12月7日
久山秀子探偵小説選1<久山秀子>
大正・昭和初期の作者は、度々再刊されているか、全くされていないか極端に分かれます。 この時代の作家の選集が組まれていますが、作品の珍しさは別にして作者としては、本作者 は最も紹介されにくいでしょう。アンソロジーにはいくつか採られていますが、今回本書を 読むと意識的に探偵小説色の強い作品が選ばれていることが分かります。地下鉄サムの日本 版と言われていましたが、作品の幅が広く極めて異色の作品を書いていた事が分かります。 次の2を読むと全貌を知るわけで、マニア必読とも言える選集です。
2004年12月11日
生首に聞いてみろ<法月綸太郎>
2004年は数年以上ぶりで長編を発表した作家が複数いる年となりました。綾辻行人・矢 作俊彦・摩耶雄嵩・原僚・そしてこの作家です。短編で推理作家協会賞を受けていますが、 長編は「ふたたび赤い悪夢」以来です。久しぶりというだけでなく、作品内容も生首と生首 彫刻との絡みで大きな展開を見せます。目的を追求する事で新たな謎が生まれ、驚愕の結末 とは言えなくても論理的思考と伏線で、結論が導かれる過程は作者の特長です。結果として 長くまたされた読者を裏切らない作品になっています。
2004年12月15日
浮気妻は名探偵<梶龍雄>
刑事と浮気妻シリーズの短編集です。浮気妻の伏山エリ子は推理だけで無く、勝手に調査に 出かけますので、安楽椅子探偵ではありません。事件の概要を簡単に伝えて短編にする為に 刑事とのコンビにしただけです。事件もこのコンビ向けが多いことは事実です。内容は犯人 当てからアクション的なものまで、一応は本格推理ですがかなり幅は広いです。
2004年12月20日
霊南坂殺人事件<矢島誠>
東京・名古屋・京都と事件がおきますが、全て自殺で処理されます。納得ゆかない新米ライ ターとその夫と、刑事が別々に事件を追います。そして偶然の出会いから共同で捜査が進み ます。それぞれ圧力がかかり、悩みながらの独断捜査です。このあたりは現実的とみるか、 やはり、小説的と見るかは個人で異なるでしょう。トリックは部分的には前例があるものも あり、しかも繰りかえされるのでやや弱いと言えるでしょう。しかし、捜査側が弱いのでト リックやアリバイを崩しても状況証拠で犯人の告白が無ければ解決しないのは物たりません。
2004年12月24日
銀行狐<池井戸潤>
銀行・金融を舞台にした短編集です。舞台と得手・不得手がありますが、非常にレベルの高 い作品集です。別に知識を得るために読む必要はありませんが、自然と色々な事を知った気 になります。複雑な世界ですが、知能犯や詐欺の格好の舞台です。勿論、作者はそれ以外の 推理小説のテーマも書いていますが、どこかでこの世界が絡んできます。基本的には(若干 の例外あり)主人公が変わりますが雰囲気はどこかにています。新しい世界の書き手だけに 読み出したらやめられない魅力があります。
2004年12月28日
霧舎巧傑作短編集<霧舎巧>
作者のデビュー前からの作品を集めた物らしいです。見た目は、色々ありです。本の題名か らも、趣向があるとは思えませんが、最近はやりの狙いが盛り込まれています。登場人物が あかずの間研究会のメンバーで、ばらばらに登場します。書きおろしは最終の1作のみです。 ミステリーというものは、まとめの作品でどうにも出来ると感じます。個々の作品について かなり丁寧に、若干の強引さもありでかかれていると感じます。
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年月別に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。