推理小説読書日記(2004/11)
2004年11月4日
二人道成寺<近藤史恵>
本作者の4作目の歌舞伎ミステリーです。酒井嘉七から戸板康二と書き告げられてきた、こ の背景がまた新しい作者で読めるのはうれしいことです。少数を除いてはこの分野は、複雑 な謎やトリックではなく、独特の世界とその世界に合った謎で構成される事に特徴がありま す。戸板氏と異なり、部外者の探偵役が登場しますが他の登場人物が歌舞伎の世界の人間と という事で、独自性は失われる事はありません。分類すれば、ライトミステリですが、この 分野の推理小説にはこれが合っていると感じます。
2004年11月7日
バビロンの迷宮<天野裕美>
現在のコンピュータ・携帯電話等の電子関係の進歩の速さは驚異的です。ある作者が書きお ろし作品を文庫にする時にどのようにするのか悩んだと書いています。結局、何も変えなか ったということです。この分野を舞台にする限り、はじめからその覚悟は必要でしょう。1 992年発表の本作もゲームソフトとパソコン通信を舞台にしていますので、いまや古いと いうよりもノスタルジーの世界です。それにしても、シスオペがハンドル名の本名を簡単に 教えてしまうのはいつの時代でも納得は出来ません。
2004年11月11日
各務原氏の逆説<氷川透>
本格推理小説の最初に登場人物の一覧表が載っているのは、いつごろからでしょうか。そし て現在も踏襲している作家はかなり少なくなっています。それは、作品内容の変化ともかな り繋がりがあると思っています。本作者も踏襲しているひとりです。本作の一覧表には「重 要な人物が抜けています」となっています。ポイントのひとつですが、これにこだわらなく ても不思議な助っ人と共にロジックを展開する進行は、この作者独特のもので読者の期待と 矛盾するものではありません。
2004年11月14日
レオナルドの沈黙<飛鳥部勝則>
探偵役が画家ですが、内容的にはやや以前と異なるイメージがあります。今はやりの構成を とっていますが、これには触れる事が出来ません。ただ、もう大部分の読者は直感的に気が ついてしまうので、もうそろそろ収束の時期と思います。不可能犯罪を扱っていますが、こ れも書きにくい内容です。底が浅いのか深いのか、よく分かりません。一番気になるのは、 レッド・へリングの部分の所です。あまりにもどうどうと使われているので、文句を言う気 もありませんが、好きにはなれません。
2004年11月18日
共犯マジック<北森鴻>
隠された謎のスケールの大きさと、複数の話しが混ざって整理しにくい構成は難解ともいえ ます。ただし読んだあとに感じる事で、各話で一応の結末がある構成なので、割と気楽に読 んでしまいます。全て作者の計算に入っていると思うとうまくやられたと感心するしかない ようです。このような構成の作品はいくつかありますが、複数の話しを収束させる手際の巧 妙さは特筆ものでしょう。読んで楽しく、読み終わって感心する作品は実はあまりなく、本 作は貴重と言えます。
2004年11月21日
十和田・田沢湖殺人ライン<深谷忠記>
かっては作者の作品の中心であった、黒江荘・笹谷美緒シリーズも比率が下がってきました。 これは作風の変化によるものと思います。従って無理に上記シリーズにすると、既発表作と 比較をしてしまい、結果として違う方向性に期待を裏切られます。無理にシリーズにする必 要はないと思います。作者が進む方向がことなれば、それにあった登場人物を使えば良いで しょう。これは無理をいっているのではなく、シリーズの持つトリック・論理性・意外性・ どんでん返しの興味を期待しての事です。
2004年11月24日
サイバー・ミッション<小笠原慧>
近未来サスペンスでしょうか。分類困難な作品です。いきなり登場する未来型のコンピュー タにどれほどの意味を感じるのかが第1関門です。かなり専門的になるので普通は深く考え ません。サスペンス風の連続殺人者の追跡が始まります。そこに表れる巨大な力と最終の結 末がすなおに感じるか、そうでないのか、人で異なるでしょう。そして本作の評価も。20 13年という設定が可能か、伏線はあるのか、結末はどの程度説得性があるのか等がポイン トになるでしょう。
2004年11月28日
藍の悲劇<太田忠司>
久々の、霞田兄妹シリーズです。現在の第2シリーズには、桐原嘉彦という影の主役?がい ます。本作に於いて、兄妹との関係はあまりにも対立という形で強くなります。本作ははじ めの登場人物一覧でも少なく(もう少し多くしてもよいと思いますが)進行を見てもまとま りそうに思いますが、微妙にもつれるようです。本格推理では、あまり書きすぎると良くあ りませんが、次回予告まで書いてよいのでしょうか。素直にうけとるべきか、はたまた・・ ただ、直ぐには次が出ない事は確かでしょう。
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二人道成寺<近藤史恵>
本作者の4作目の歌舞伎ミステリーです。酒井嘉七から戸板康二と書き告げられてきた、こ の背景がまた新しい作者で読めるのはうれしいことです。少数を除いてはこの分野は、複雑 な謎やトリックではなく、独特の世界とその世界に合った謎で構成される事に特徴がありま す。戸板氏と異なり、部外者の探偵役が登場しますが他の登場人物が歌舞伎の世界の人間と という事で、独自性は失われる事はありません。分類すれば、ライトミステリですが、この 分野の推理小説にはこれが合っていると感じます。
2004年11月7日
バビロンの迷宮<天野裕美>
現在のコンピュータ・携帯電話等の電子関係の進歩の速さは驚異的です。ある作者が書きお ろし作品を文庫にする時にどのようにするのか悩んだと書いています。結局、何も変えなか ったということです。この分野を舞台にする限り、はじめからその覚悟は必要でしょう。1 992年発表の本作もゲームソフトとパソコン通信を舞台にしていますので、いまや古いと いうよりもノスタルジーの世界です。それにしても、シスオペがハンドル名の本名を簡単に 教えてしまうのはいつの時代でも納得は出来ません。
2004年11月11日
各務原氏の逆説<氷川透>
本格推理小説の最初に登場人物の一覧表が載っているのは、いつごろからでしょうか。そし て現在も踏襲している作家はかなり少なくなっています。それは、作品内容の変化ともかな り繋がりがあると思っています。本作者も踏襲しているひとりです。本作の一覧表には「重 要な人物が抜けています」となっています。ポイントのひとつですが、これにこだわらなく ても不思議な助っ人と共にロジックを展開する進行は、この作者独特のもので読者の期待と 矛盾するものではありません。
2004年11月14日
レオナルドの沈黙<飛鳥部勝則>
探偵役が画家ですが、内容的にはやや以前と異なるイメージがあります。今はやりの構成を とっていますが、これには触れる事が出来ません。ただ、もう大部分の読者は直感的に気が ついてしまうので、もうそろそろ収束の時期と思います。不可能犯罪を扱っていますが、こ れも書きにくい内容です。底が浅いのか深いのか、よく分かりません。一番気になるのは、 レッド・へリングの部分の所です。あまりにもどうどうと使われているので、文句を言う気 もありませんが、好きにはなれません。
2004年11月18日
共犯マジック<北森鴻>
隠された謎のスケールの大きさと、複数の話しが混ざって整理しにくい構成は難解ともいえ ます。ただし読んだあとに感じる事で、各話で一応の結末がある構成なので、割と気楽に読 んでしまいます。全て作者の計算に入っていると思うとうまくやられたと感心するしかない ようです。このような構成の作品はいくつかありますが、複数の話しを収束させる手際の巧 妙さは特筆ものでしょう。読んで楽しく、読み終わって感心する作品は実はあまりなく、本 作は貴重と言えます。
2004年11月21日
十和田・田沢湖殺人ライン<深谷忠記>
かっては作者の作品の中心であった、黒江荘・笹谷美緒シリーズも比率が下がってきました。 これは作風の変化によるものと思います。従って無理に上記シリーズにすると、既発表作と 比較をしてしまい、結果として違う方向性に期待を裏切られます。無理にシリーズにする必 要はないと思います。作者が進む方向がことなれば、それにあった登場人物を使えば良いで しょう。これは無理をいっているのではなく、シリーズの持つトリック・論理性・意外性・ どんでん返しの興味を期待しての事です。
2004年11月24日
サイバー・ミッション<小笠原慧>
近未来サスペンスでしょうか。分類困難な作品です。いきなり登場する未来型のコンピュー タにどれほどの意味を感じるのかが第1関門です。かなり専門的になるので普通は深く考え ません。サスペンス風の連続殺人者の追跡が始まります。そこに表れる巨大な力と最終の結 末がすなおに感じるか、そうでないのか、人で異なるでしょう。そして本作の評価も。20 13年という設定が可能か、伏線はあるのか、結末はどの程度説得性があるのか等がポイン トになるでしょう。
2004年11月28日
藍の悲劇<太田忠司>
久々の、霞田兄妹シリーズです。現在の第2シリーズには、桐原嘉彦という影の主役?がい ます。本作に於いて、兄妹との関係はあまりにも対立という形で強くなります。本作ははじ めの登場人物一覧でも少なく(もう少し多くしてもよいと思いますが)進行を見てもまとま りそうに思いますが、微妙にもつれるようです。本格推理では、あまり書きすぎると良くあ りませんが、次回予告まで書いてよいのでしょうか。素直にうけとるべきか、はたまた・・ ただ、直ぐには次が出ない事は確かでしょう。
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年月別に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。