推理小説読書日記(2004/09)
2004年9月5日
真っ暗な夜明け<氷川透>
本作者のデビュー作です。これほどエラリー・クイーンの影響を強く受けた作者が登場した 事自体が、私には奇跡的です。私の好みにこれほど一致する作風も珍しいです。トリックも 無いわけでないが、基本はロジックの固まりです。学生時代の音楽グループ仲間での事件で すが解決に到る長いロジック自体が他の作者と既に異なります。ミステリの同一キャラクタ シリーズは発表順に読むのが定跡です。読むのが4冊目という事で容疑者をふたり減らして しまいました。しかし、バイキャラも魅力的に書かれています。
2004年9月9日
海底密室<三雲岳斗>
日本SF大賞新人賞作家の第2作です。設定が近未来で海底での実験住居での事件です。構成 自体は古典的です。しかし、フェアプレイかどうかは読者の知識で変わります。理系の私は 大体片方の事件は分かりましたが、検証することが必要にも思います。まあ、細部はそこそ こで納得するのが無難な読み方でしょう。特殊環境と最新科学技術で構成された、古典密室 ははたしてどのような評価を得るのでしょうか。特殊な動機で作られた館ものとは一線を引 きますが、結果的には似た雰囲気になります。
2004年9月12日
梶龍雄<野天風呂殺人事件>
ストリッパー探偵チエカシリーズの短編集です。時代背景を描くことから風俗派とも言われ る作者ですが、本シリーズは東京浅草を舞台にストリッパーだが熱狂的な踊りをする主人公 が活躍します。次第に探偵能力が有名になり、事件の依頼を受けるようになるのは、シリー ズ物の定番です。主として1ネタものが主体ですが、ひねりが入った作品もあります。短編 でもあり、本格でもソフト本格です。伏線も利いている作品もあり、若干の注意を要求され ます。
2004年9月16日
新庄節美<聖夜は黒いドレス>
少女泥棒スカーレット・パラソルのシリーズ2作目です。ただし、3作目は書かれていませ ん。ジュブナイルとして書かれているので、本格でも深い謎でもありません。しかし逆に奇 抜な設定、冒険的小説に隠された伏線もあり、読みやすさとともに充分楽しめます。チビー シリーズで有名な作者ですが、このシリーズの続編も期待したい所です。ひょっとすると、 恋愛小説になっている可能性もあります。
2004年9月18日
泡坂妻夫<鳥居の赤兵衛 宝引の辰捕物帳>
多才な世界に生きる作者ですが、小説に限っても「推理小説」「時代小説」「人情物(中間 小説)」と多才でどれも一流です。「推理小説」が特に多い事に愛好者にひとりとして、幸 運を喜ぶばかりです。この作者の作品で最近多いのが、全ての要素を持つ「捕物帳」です。 この分野でも、最初は主人公に拘らず色々な趣向を見せましたが、テレビ化以降は「宝引の 辰」が主人公になっています。ただし、視点・話しの展開はやはり多彩で短編集と言っても 決まったパターンはありません。
2004年9月21日
戸松淳矩<名探偵は千秋楽に謎を解く>
ソノラマ文庫はジュニア向けですので、作品の楽しみ方も変えるべきでしょう。本作は、構 成的に面白さを目指し過ぎて、相当な無理が感じます。でも、対象を考えてこだわら無けれ ば、意外性も充分にあり、登場人物にも個性がありその面では成功していると言えます。な ぜ千秋楽なのかをはたして、どれほどの読者が納得するのでしょうか。あるいは、バカミス と呼ばれるミステリの走りと見るべきかもしれません。
2004年9月23日
井口民樹<大山・宍道湖殺人ライン>
カバーに「トラベルミステリー」となっています。誰かが旅行して、観光地の紹介が小説内 にあれば上記に分類されるのでしょうか。事件自体は過去を含めて沢山生じ、アリバイ崩し を中心に盛り沢山の趣向があります。ただ欠点は、この種の作品に多くありますが、共犯者 がおれば何でもできる、決めての証拠を読者が一般知識として持っていないと思う、アリバ イの崩れ方やストーリーに偶然性が多すぎるなどです。力作ですが、好作になりそこねた、 残念な意欲作と思えます。
2004年9月29日
近藤史恵<猿若町捕物帳 巴之丞鹿の子>
題名の通り、捕物帳です。歌舞伎ものを書く作者ですので、この分野の注文・執筆も意外と いえません。捕物帳と言えば人情物も多くあります、現代の若者の恋愛小説も書く作者が如 何に料理するかが興味のある所です。本作は第1作でもあり、まだ時代ソフト推理小説を越 えていない様に感じます。推理味はあるので、登場人物が揃った所で、以降の楽しみと言う 所と思います。
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真っ暗な夜明け<氷川透>
本作者のデビュー作です。これほどエラリー・クイーンの影響を強く受けた作者が登場した 事自体が、私には奇跡的です。私の好みにこれほど一致する作風も珍しいです。トリックも 無いわけでないが、基本はロジックの固まりです。学生時代の音楽グループ仲間での事件で すが解決に到る長いロジック自体が他の作者と既に異なります。ミステリの同一キャラクタ シリーズは発表順に読むのが定跡です。読むのが4冊目という事で容疑者をふたり減らして しまいました。しかし、バイキャラも魅力的に書かれています。
2004年9月9日
海底密室<三雲岳斗>
日本SF大賞新人賞作家の第2作です。設定が近未来で海底での実験住居での事件です。構成 自体は古典的です。しかし、フェアプレイかどうかは読者の知識で変わります。理系の私は 大体片方の事件は分かりましたが、検証することが必要にも思います。まあ、細部はそこそ こで納得するのが無難な読み方でしょう。特殊環境と最新科学技術で構成された、古典密室 ははたしてどのような評価を得るのでしょうか。特殊な動機で作られた館ものとは一線を引 きますが、結果的には似た雰囲気になります。
2004年9月12日
梶龍雄<野天風呂殺人事件>
ストリッパー探偵チエカシリーズの短編集です。時代背景を描くことから風俗派とも言われ る作者ですが、本シリーズは東京浅草を舞台にストリッパーだが熱狂的な踊りをする主人公 が活躍します。次第に探偵能力が有名になり、事件の依頼を受けるようになるのは、シリー ズ物の定番です。主として1ネタものが主体ですが、ひねりが入った作品もあります。短編 でもあり、本格でもソフト本格です。伏線も利いている作品もあり、若干の注意を要求され ます。
2004年9月16日
新庄節美<聖夜は黒いドレス>
少女泥棒スカーレット・パラソルのシリーズ2作目です。ただし、3作目は書かれていませ ん。ジュブナイルとして書かれているので、本格でも深い謎でもありません。しかし逆に奇 抜な設定、冒険的小説に隠された伏線もあり、読みやすさとともに充分楽しめます。チビー シリーズで有名な作者ですが、このシリーズの続編も期待したい所です。ひょっとすると、 恋愛小説になっている可能性もあります。
2004年9月18日
泡坂妻夫<鳥居の赤兵衛 宝引の辰捕物帳>
多才な世界に生きる作者ですが、小説に限っても「推理小説」「時代小説」「人情物(中間 小説)」と多才でどれも一流です。「推理小説」が特に多い事に愛好者にひとりとして、幸 運を喜ぶばかりです。この作者の作品で最近多いのが、全ての要素を持つ「捕物帳」です。 この分野でも、最初は主人公に拘らず色々な趣向を見せましたが、テレビ化以降は「宝引の 辰」が主人公になっています。ただし、視点・話しの展開はやはり多彩で短編集と言っても 決まったパターンはありません。
2004年9月21日
戸松淳矩<名探偵は千秋楽に謎を解く>
ソノラマ文庫はジュニア向けですので、作品の楽しみ方も変えるべきでしょう。本作は、構 成的に面白さを目指し過ぎて、相当な無理が感じます。でも、対象を考えてこだわら無けれ ば、意外性も充分にあり、登場人物にも個性がありその面では成功していると言えます。な ぜ千秋楽なのかをはたして、どれほどの読者が納得するのでしょうか。あるいは、バカミス と呼ばれるミステリの走りと見るべきかもしれません。
2004年9月23日
井口民樹<大山・宍道湖殺人ライン>
カバーに「トラベルミステリー」となっています。誰かが旅行して、観光地の紹介が小説内 にあれば上記に分類されるのでしょうか。事件自体は過去を含めて沢山生じ、アリバイ崩し を中心に盛り沢山の趣向があります。ただ欠点は、この種の作品に多くありますが、共犯者 がおれば何でもできる、決めての証拠を読者が一般知識として持っていないと思う、アリバ イの崩れ方やストーリーに偶然性が多すぎるなどです。力作ですが、好作になりそこねた、 残念な意欲作と思えます。
2004年9月29日
近藤史恵<猿若町捕物帳 巴之丞鹿の子>
題名の通り、捕物帳です。歌舞伎ものを書く作者ですので、この分野の注文・執筆も意外と いえません。捕物帳と言えば人情物も多くあります、現代の若者の恋愛小説も書く作者が如 何に料理するかが興味のある所です。本作は第1作でもあり、まだ時代ソフト推理小説を越 えていない様に感じます。推理味はあるので、登場人物が揃った所で、以降の楽しみと言う 所と思います。
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年月別に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。