推理小説読書日記(2004/08)
2004年8月1日
女はベッドで推理する<梶龍雄>
最初は安楽椅子探偵風だったが、結局は変則な組み合わせのホームズ・ワトソンものです。 ただ類似のキャラクターも古くからあるので、やはり本格推理の内容でしょう。探偵の仕方 は直感的で論理的よりも推測的です。短編には向いているとも言えますが、読者の好き嫌い が分かれる所でしょう。
2004年8月5日
影を逃れて<南部樹未子>
心理サスペンスというジャンルは、ミステリなのか中間小説なのか純文学なのか難しいです。 本作者は、典型的なそのジャンルのひとりです。純文学出身ですが、殺人を扱う事が多いの でミステリの分野に誘われましたが、人間の心理を追求する姿勢は変わりません。本作は、 複数の謎があり、伏線もあるミステリ色の強いものですが、人間心理の追求は変わりません。 むしろ、視点を変えれば複数の作品に発展出来る可能性が感じられます。
2004年8月10日
動物園の鳥<坂木司>
シリーズ3作目で初長編で、最終または中断。悩みや問題を持たない人間はいないと言う事 で、殆どの登場人物の心の問題が明らかにされて、そして次の段階に進もうとして行きます。 これは、主人公の鳥井真一も坂木司も同様です。表面的な謎は浅いですが、真実のテーマの 心の謎は深く、完全に解決する事はありません。登場人物が3作で重複しているので、出版 順に読む事をお薦めします。
2004年8月12日
火の粉<雫井脩介>
犯罪小説とカバーに書いてあります。犯罪小説は。推理小説ではないのでしょうか。読者が 解かなければならない謎はないと言えるし、話しの展開も偶然が連続している。作者はきち んとしたテーマを書いているのですが、勝手に推理小説として見てしまうので退屈でした。 犯罪小説としての感想は、特になしです。この方面に詳しい人の感想を聞くのが良いでしょ う。
2004年8月14日
密室ロジック<氷川透>
エラリー・クイーン>法月倫太郎の流れを継ぐ作者です。トリックよりも論理で構成されて います。密室と言っても、人の視点(監視)の密室ですが、それ故に論理で追求が可能です。 ただし、本作は安楽椅子探偵形式で解くので論理では解けていますが、犯人逮捕までは描か れていません。これは、この様な作風ではよく有ることです。コンパクトに整理された作品 も、好感があります。
2004年8月18日
二重殺人トライアル<由良三郎>
専門の医学知識と趣味の音楽とが、中心の作者です。本作もテーマ・トリック共に作者の特 徴が発揮された作品です。作者は犯人設定にもう一つの工夫を凝らしていますが、個人的に はトリックの方が印象に残ります。時代の変化と共に新しいトリックが生まれる。それが応 用であっても、トリックの枯渇は簡単に生じない事がわかります。ミステリの謎はなくなる 事はない事を示したと言えます。
2004年8月20日
阿蘇・雲仙ロマンルート殺人事件<荻原秀夫>
警察小説の作者が、トラベルミステリー・アリバイ崩しを書いた作品と見るのが無難と思い ます。伏線とするには、長すぎる前半はトラベル小説的です。中盤で殺人が起きてからは、 アリバイ崩しが始まっているとしても表面的には整理不足で謎の有無が分かりにくいです。 捜査が始まってからは警察の組織力で一気に解決に向かいます。これが警察捜査と感じます が、ミステリ的にはリアルさと偶然の重なりであっけないです。
2004年8月24日
謀略<西東登>
現在でいうサスペンスを狙った作品と思います。まだ技術も分野も確立していない時期の為 に、単なる犯罪小説または落ちのある小説になっています。勿論、書かれた時代の考慮が必 要ですが、作者の狙いが分かりにくいのでこれも難しいと感じます。メインが偶然に依る物 であるのでミステリとしては、評価する事自体難しいです。詐欺小説としての見方も、難し いと思います。
2004年8月28日
北太平洋の壁<福本和也>
作者が「サスペンス作家で珍しく本格推理を書いた」と言ってます。読んだ数が少ないので 本格味は少ないが、サスペンスのイメージも持っていませんでした。航空機等の知識を生か した特殊分野の作者の認識が強いです。本作も本格の形式を取っていますが、専門知識を使 った大きなアリバイ崩しがメインで一般的な本格とは、少し異なる様です。謎のスケールの 大きさとあまり論理的でない解明の、どちらに注目するかで評価が決まるでしょう。
2004年8月31日
思いあがりのエピローグ<斎藤肇>
作者のデビュー3部作の最終作です。複数冊でシリーズになっている作品は注意が必要で、 全部を読まないと作者の意図が伝わってこない事があります。このシリーズがそれです。 なぜか最終作を読まなかった事を今は悔やむばかりです。この特殊な作品で作者はミステリ を確かめたと言っていますが。その後、多くなった類似作と比べても本作の徹底ぶりは印象 に残ります。この後他分野に広がり掴み所が不明の作者は、出発時に既に混沌としてます。
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女はベッドで推理する<梶龍雄>
最初は安楽椅子探偵風だったが、結局は変則な組み合わせのホームズ・ワトソンものです。 ただ類似のキャラクターも古くからあるので、やはり本格推理の内容でしょう。探偵の仕方 は直感的で論理的よりも推測的です。短編には向いているとも言えますが、読者の好き嫌い が分かれる所でしょう。
2004年8月5日
影を逃れて<南部樹未子>
心理サスペンスというジャンルは、ミステリなのか中間小説なのか純文学なのか難しいです。 本作者は、典型的なそのジャンルのひとりです。純文学出身ですが、殺人を扱う事が多いの でミステリの分野に誘われましたが、人間の心理を追求する姿勢は変わりません。本作は、 複数の謎があり、伏線もあるミステリ色の強いものですが、人間心理の追求は変わりません。 むしろ、視点を変えれば複数の作品に発展出来る可能性が感じられます。
2004年8月10日
動物園の鳥<坂木司>
シリーズ3作目で初長編で、最終または中断。悩みや問題を持たない人間はいないと言う事 で、殆どの登場人物の心の問題が明らかにされて、そして次の段階に進もうとして行きます。 これは、主人公の鳥井真一も坂木司も同様です。表面的な謎は浅いですが、真実のテーマの 心の謎は深く、完全に解決する事はありません。登場人物が3作で重複しているので、出版 順に読む事をお薦めします。
2004年8月12日
火の粉<雫井脩介>
犯罪小説とカバーに書いてあります。犯罪小説は。推理小説ではないのでしょうか。読者が 解かなければならない謎はないと言えるし、話しの展開も偶然が連続している。作者はきち んとしたテーマを書いているのですが、勝手に推理小説として見てしまうので退屈でした。 犯罪小説としての感想は、特になしです。この方面に詳しい人の感想を聞くのが良いでしょ う。
2004年8月14日
密室ロジック<氷川透>
エラリー・クイーン>法月倫太郎の流れを継ぐ作者です。トリックよりも論理で構成されて います。密室と言っても、人の視点(監視)の密室ですが、それ故に論理で追求が可能です。 ただし、本作は安楽椅子探偵形式で解くので論理では解けていますが、犯人逮捕までは描か れていません。これは、この様な作風ではよく有ることです。コンパクトに整理された作品 も、好感があります。
2004年8月18日
二重殺人トライアル<由良三郎>
専門の医学知識と趣味の音楽とが、中心の作者です。本作もテーマ・トリック共に作者の特 徴が発揮された作品です。作者は犯人設定にもう一つの工夫を凝らしていますが、個人的に はトリックの方が印象に残ります。時代の変化と共に新しいトリックが生まれる。それが応 用であっても、トリックの枯渇は簡単に生じない事がわかります。ミステリの謎はなくなる 事はない事を示したと言えます。
2004年8月20日
阿蘇・雲仙ロマンルート殺人事件<荻原秀夫>
警察小説の作者が、トラベルミステリー・アリバイ崩しを書いた作品と見るのが無難と思い ます。伏線とするには、長すぎる前半はトラベル小説的です。中盤で殺人が起きてからは、 アリバイ崩しが始まっているとしても表面的には整理不足で謎の有無が分かりにくいです。 捜査が始まってからは警察の組織力で一気に解決に向かいます。これが警察捜査と感じます が、ミステリ的にはリアルさと偶然の重なりであっけないです。
2004年8月24日
謀略<西東登>
現在でいうサスペンスを狙った作品と思います。まだ技術も分野も確立していない時期の為 に、単なる犯罪小説または落ちのある小説になっています。勿論、書かれた時代の考慮が必 要ですが、作者の狙いが分かりにくいのでこれも難しいと感じます。メインが偶然に依る物 であるのでミステリとしては、評価する事自体難しいです。詐欺小説としての見方も、難し いと思います。
2004年8月28日
北太平洋の壁<福本和也>
作者が「サスペンス作家で珍しく本格推理を書いた」と言ってます。読んだ数が少ないので 本格味は少ないが、サスペンスのイメージも持っていませんでした。航空機等の知識を生か した特殊分野の作者の認識が強いです。本作も本格の形式を取っていますが、専門知識を使 った大きなアリバイ崩しがメインで一般的な本格とは、少し異なる様です。謎のスケールの 大きさとあまり論理的でない解明の、どちらに注目するかで評価が決まるでしょう。
2004年8月31日
思いあがりのエピローグ<斎藤肇>
作者のデビュー3部作の最終作です。複数冊でシリーズになっている作品は注意が必要で、 全部を読まないと作者の意図が伝わってこない事があります。このシリーズがそれです。 なぜか最終作を読まなかった事を今は悔やむばかりです。この特殊な作品で作者はミステリ を確かめたと言っていますが。その後、多くなった類似作と比べても本作の徹底ぶりは印象 に残ります。この後他分野に広がり掴み所が不明の作者は、出発時に既に混沌としてます。
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年月別に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。