推理小説読書日記(2003/11)
2003年11月1日
金沢逢魔殺人事件<梶龍雄>
「透明な季節」で江戸川乱歩賞を受賞後に書いた「旧制高校シリーズ」の1作です。 ある程度の本格推理小説の愛好家を意識した内容(トリック)になっています。 探偵捜しという謎があるならば、本作もそれにあたるでしょう。犯人と探偵とがわからない 状態でのラストの一旗打ちはかなりの迫力です。
2003年11月4日
赤ちゃんがいっぱい<青井夏海>
助産婦シリーズの2作目で、初長編です。 本格推理小説ですが、人が死ぬ訳でありません。謎は別の所にあります。日常の謎派なのか 岡島二人のように単に殺人が絡まない小説なのか、境目にあるように思います。怪しげな所に 就職した陽奈が活躍します。でもやっぱりカリスマ助産婦の明楽先生の名推理で解決します。
2003年11月7日
悪魔は天使である<辻真先>
戦時中と現在を舞台にした、作者得意の入れ子の作品です。時代背景が作りものでないので この作者にしては、奇想度がおとなしい感じがします。あとがきと書誌風のものもあり、まとも すぎてやや異色の感もします。もっとも、普通のレベルでは完全に凝った狙いです。(説明しにくい) 巻末の作品見本棚をみると眩暈がします。
2003年11月11日
それでも警官は微笑う<日明恩>
難読作家名(たちもりめぐみ)です。あやしげな警察小説です。ミステリの範囲にあるかどうかは かなり微妙です。本格ミステリ以外では、謎・事件の解決を行わない作品が少しずつ増えています。 本格にも少しこの影響が出ているようだが、流石に楽しめません。それでは本作のような警察小説では と考えますが、もはやミステリのイメージで読むのが無理のように思います。
2003年11月13日
深大寺殺人事件<西東登>
昭和47年10月刊。横溝ブームの直前です。このころも「新本格」の言葉があったらしい。 トリック中心の本格ではなく、社会派でもなくハードボイルドでもない。個人が独自の方法で書いている ということです。しかし、時代の変化の後で読むと、残念ながら中途半端な感が強いです。同じ大きさの 器に色々な要素を入れるときには、全てが薄くならない工夫が必要だと感じさせる作品です。
2003年11月16日
ハードボイルド・エッグ<荻原浩>
題名通りハードボイルドのスタイルでかかれています。主人公が、チャンドラーにあこがれ、マーロウに 台詞をまねます。そして、スタートが動物捜しの私立探偵とくれば、ユーモアものと勘違いしかけても 仕方がないでしょう。所が殺人事件が発生して、正体不明?の助手と捜査に乗り出します。ユーモアは 全編に漂いますが本格小説としての骨組ももつ異色のミステリになっています。
2003年11月19日
怪盗クイーンの優雅な休暇<はやみねかおる>
青い鳥文庫であっても、大人にも人気のある作者です。 クイーン登場は3回目です。限度の分からない能力と同時にいいかげんさを併せ持つ怪盗と取り巻きの 会話は漫才そのものともいえます。休暇にでたものの寝ているか、仕事(含む対決)ばかりしていて 優雅かどうか分からない旅行は、楽しませてくれます。
2003年11月23日
セミョーロフは二度殺せ<日下圭介>
この作者としては異色作の評判だったので、今まで読んでいませんでした。 本格ミステリーではなく、戦記サスペンスといった方が正しいでしょう。このあと続々と書かれた歴史 者・戦記物サスペンスの先駆的作品でしょう。既に複数の話を平行させて進める方式が採用されています。 事実は変えないという作者は、話の終わりもミステリアスです。
2003年11月27日
青空の卵<坂木司>
新人のデビュー作で一応、覆面作家です。連作集ですが登場人物を使い捨てにしたくないという作者の 言葉通り、オムニバスに近い連作集でした。初めは御手洗と石岡の日常の謎派かと思いましたが、実際は 人間の心の奥深く入ってゆく、内容の深いまったく異なる内容でした。これを書くには日常の謎以外では 無理であるといえます。感動的な作品でした。
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金沢逢魔殺人事件<梶龍雄>
「透明な季節」で江戸川乱歩賞を受賞後に書いた「旧制高校シリーズ」の1作です。 ある程度の本格推理小説の愛好家を意識した内容(トリック)になっています。 探偵捜しという謎があるならば、本作もそれにあたるでしょう。犯人と探偵とがわからない 状態でのラストの一旗打ちはかなりの迫力です。
2003年11月4日
赤ちゃんがいっぱい<青井夏海>
助産婦シリーズの2作目で、初長編です。 本格推理小説ですが、人が死ぬ訳でありません。謎は別の所にあります。日常の謎派なのか 岡島二人のように単に殺人が絡まない小説なのか、境目にあるように思います。怪しげな所に 就職した陽奈が活躍します。でもやっぱりカリスマ助産婦の明楽先生の名推理で解決します。
2003年11月7日
悪魔は天使である<辻真先>
戦時中と現在を舞台にした、作者得意の入れ子の作品です。時代背景が作りものでないので この作者にしては、奇想度がおとなしい感じがします。あとがきと書誌風のものもあり、まとも すぎてやや異色の感もします。もっとも、普通のレベルでは完全に凝った狙いです。(説明しにくい) 巻末の作品見本棚をみると眩暈がします。
2003年11月11日
それでも警官は微笑う<日明恩>
難読作家名(たちもりめぐみ)です。あやしげな警察小説です。ミステリの範囲にあるかどうかは かなり微妙です。本格ミステリ以外では、謎・事件の解決を行わない作品が少しずつ増えています。 本格にも少しこの影響が出ているようだが、流石に楽しめません。それでは本作のような警察小説では と考えますが、もはやミステリのイメージで読むのが無理のように思います。
2003年11月13日
深大寺殺人事件<西東登>
昭和47年10月刊。横溝ブームの直前です。このころも「新本格」の言葉があったらしい。 トリック中心の本格ではなく、社会派でもなくハードボイルドでもない。個人が独自の方法で書いている ということです。しかし、時代の変化の後で読むと、残念ながら中途半端な感が強いです。同じ大きさの 器に色々な要素を入れるときには、全てが薄くならない工夫が必要だと感じさせる作品です。
2003年11月16日
ハードボイルド・エッグ<荻原浩>
題名通りハードボイルドのスタイルでかかれています。主人公が、チャンドラーにあこがれ、マーロウに 台詞をまねます。そして、スタートが動物捜しの私立探偵とくれば、ユーモアものと勘違いしかけても 仕方がないでしょう。所が殺人事件が発生して、正体不明?の助手と捜査に乗り出します。ユーモアは 全編に漂いますが本格小説としての骨組ももつ異色のミステリになっています。
2003年11月19日
怪盗クイーンの優雅な休暇<はやみねかおる>
青い鳥文庫であっても、大人にも人気のある作者です。 クイーン登場は3回目です。限度の分からない能力と同時にいいかげんさを併せ持つ怪盗と取り巻きの 会話は漫才そのものともいえます。休暇にでたものの寝ているか、仕事(含む対決)ばかりしていて 優雅かどうか分からない旅行は、楽しませてくれます。
2003年11月23日
セミョーロフは二度殺せ<日下圭介>
この作者としては異色作の評判だったので、今まで読んでいませんでした。 本格ミステリーではなく、戦記サスペンスといった方が正しいでしょう。このあと続々と書かれた歴史 者・戦記物サスペンスの先駆的作品でしょう。既に複数の話を平行させて進める方式が採用されています。 事実は変えないという作者は、話の終わりもミステリアスです。
2003年11月27日
青空の卵<坂木司>
新人のデビュー作で一応、覆面作家です。連作集ですが登場人物を使い捨てにしたくないという作者の 言葉通り、オムニバスに近い連作集でした。初めは御手洗と石岡の日常の謎派かと思いましたが、実際は 人間の心の奥深く入ってゆく、内容の深いまったく異なる内容でした。これを書くには日常の謎以外では 無理であるといえます。感動的な作品でした。
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年月別に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。