推理小説読書日記(2003/10)
2003年10月1日
名探偵Z 不可能推理<芦辺拓>
本名、乙名探偵(おとな とるただ)、人よんで名探偵Zが活躍する短篇集です。 シュロック・ホウムズ(パロデイ)もびっくりのとんでも無い推理?を展開します。 共演が「保瀬警部最大の事件」のメンバーとあってはただでは終わりません。でもこれで満足 しない作者は、少女怪盗ψまで登場させます。続編を期待します。
2003年10月3日
金木犀の薫る街<南部樹未子>
広義の推理小説でもないようです。もともと純文学から出発し、犯罪を題材にしていたので 推理小説の世界に入った作者です。あえて分類すれば犯罪小説になるでしょう。 後期には、宗教と信仰の世界へも入っています。この小説もこの流れに入ると思われます 読んで面白いですが、推理小説ではありません。
2003年10月5日
紅蓮の毒<日下圭介>
昭和初期を舞台に、富山の薬売りの辻村健作を探偵役にした連作です。 顔見知りの家を訪ねてあるく内に、事件に巡りあう仕組みです。 時代背景は、探偵役が現実的な時期でもありますが、ストーリーにも使っている所があります。 内容は非常に多彩な内容で色々な種類の事件に出会います。 最近は新作の発表が途絶えている作者ですが、短篇の名手は本連作集でも発揮しています。
2003年10月8日
コッペリア<加納朋子>
初長編です。日常の謎・ファンタジー要素などが長編になるとどのようになるのでしょうか。 人形と演劇と過去とくれば、日常とは世界がはなれます。人間にとって人形は特別の存在とも いえます。江戸川乱歩・高木彬光・ベンヘクトなどの作品を思いだします。どちらかと言えば スリラーの印象があります。 本作では人形を巡って、作る・集める・好きになる・自分とそっくりな人形にあう人々が登場 します。特に最後の主人公の出会いが偶然か必然かの謎が大きいですが、この謎と人形との関わり が醸す雰囲気とどちらが主題かと言われると悩みます。・・後者かな・・・。
2003年10月11日
啄木が殺した女<日下圭介>
江戸川乱歩賞受賞以後、ゆっくりしたペースで長編を書きながら短篇の名手として知られている 作者です。初期には動物・植物の生態を謎の解明に取り入れた作品を多く発表しています。 その後、シリーズキャラクターの登場・昭和初期を背景に取り入れた作品も多く手がけています。 本長編もそのひとつと言えるでしょう。ただフィクションでも過去の事実を小説の都合で変えて しまう姿勢を極力さけています。 過去と現在の謎を解く形にはなりますが、過去については謎を作る事が出来ないのでかなりの制約 となります。豊富な取材による力作ですが、やや切れ味が鈍く感じる気もします。
2003年10月13日
青葉の頃は終わった<近藤史恵>
帯やカバーには、青春ミステリー・長編推理小説と書いてあります。 そのつもりで読むと辛い内容です。友人の自殺の理由を探す話ですが謎といえるかどうか読みおわら ないと分かりません。半分までは意味が分からないで読むしかありません。全4章中の3章で事件らしき 事が起きますが、本筋とは異なります。 結局は動機さがしなのですが、謎が存在するのかどうかが分からないのとその謎が読者を選ぶ所に、 疑問があります。少なくても年齢的に選ばれていなかった私には読む事自体が疲れる小説でした。
2003年10月16日
轍(わだち)の下<西東登>
1965年に出版されています。作者は前年に江戸川乱歩賞を受賞しています。 序と末尾を除くと、犯罪小説の内容です。倒叙推理とは言えないと思います。この2−3年前から 結城昌治・三好徹・河野典生などがスパイ・ハードボイルドスタイルを模索している時期であり、 本作の偶然を繋げた起伏の無い展開は見劣りがします。 問題は序と末尾の追加です。ただ、特に謎があるわけでなく、どんでん返しのある話に留まって います。書かれた時代を加味して読むようにしていますが、当時のレベルでも失敗作だったと思います。
2003年10月19日
プレシャス・ライアー<菅浩江>
「近未来SF小説」です。 コンピュータによるバーチャルの世界は知識として広がっているので、驚かないでしょう。所が 知識からはみだした世界に入ると現実とはなにかが分からなくなってしまう事がテーマです。 作者はそれをコンピュータ世界と人工頭脳から入り、神とは何か、平行宇宙の存在の有無まで 読者を誘いこんで行きます。キーワードは量子コンピュータと確率と言えば、ネタバレといわれる 可能性もありますが解説にもありますので良いでしょう。それがどのように上記の世界に繋がるかを 謎として読むと推理小説としても読めます。勿論、ファンタジーでもSFでも読者の自由です。
2003年10月21日
博多大花火殺人事件<木谷恭介>
ヴァン・ダインは生涯に書けるまともなミステリは数冊だといいました。もし彼が現在の日本を 見ればどのようなコメントがでるか興味があります。たぶん、重要なのは量ではないと言うでしょう。 英米と日本とは異なるので、日本の作家が多作を求められている事は事実でしょう。 20年で100冊を容易に越える本作者も多作家のひとりです。このような作者の本を初めて読んで 感想を書くことに何の意味があるのかとも思いますが、長編で玉石混在が許される訳ではありません。 本作を読むとミステリとは何かと考えます。背景になるストーリーは面白く出来ていますが、謎が 非常に安易に解決してしまいます。結果的には謎はなかった様な事に見えます。
2003年10月26日
最後のデイナー<島田荘司>
特にミステリーと謳っていないので、このことはコメントする内容ではありません。 「里美上京」「大根奇聞」「最後のデイナー」の3編です。後の2編はミステリ性があります しかし、解決が突然というか極端すぎて、謎が存在したとは言い難いです。 ただ、御手洗潔という人気キャラクターがあり、彼のカリスマ性を読むのを期待する読者は多い ので、それが発揮している2編は別の見方が必要であると思う。 ファンが期待する作品を書く、これは重要と思います
2003年10月29日
宇宙神の不思議<二階堂黎人>
学生水乃サトルシリーズの第2作です。 本格推理小説です。宇宙人とUFOに関する事が沢山出てきます。これをどう思うかで本作の評価が変わる と思います。神秘的現象を合理的に解決するというレベルでは1000枚を越える長編が成立するとは 言い難いです。本作がもし、半分の長さで書かれていたら、好作と思います。しかし、ただ長いとしか 印象の無い部分で長くなっていると感じました。何故余分な事にページを使ったのか理解出来ません。 個人で印象は異なると思いますが、私は計算違いと思いました。
←日記一覧へ戻る
名探偵Z 不可能推理<芦辺拓>
本名、乙名探偵(おとな とるただ)、人よんで名探偵Zが活躍する短篇集です。 シュロック・ホウムズ(パロデイ)もびっくりのとんでも無い推理?を展開します。 共演が「保瀬警部最大の事件」のメンバーとあってはただでは終わりません。でもこれで満足 しない作者は、少女怪盗ψまで登場させます。続編を期待します。
2003年10月3日
金木犀の薫る街<南部樹未子>
広義の推理小説でもないようです。もともと純文学から出発し、犯罪を題材にしていたので 推理小説の世界に入った作者です。あえて分類すれば犯罪小説になるでしょう。 後期には、宗教と信仰の世界へも入っています。この小説もこの流れに入ると思われます 読んで面白いですが、推理小説ではありません。
2003年10月5日
紅蓮の毒<日下圭介>
昭和初期を舞台に、富山の薬売りの辻村健作を探偵役にした連作です。 顔見知りの家を訪ねてあるく内に、事件に巡りあう仕組みです。 時代背景は、探偵役が現実的な時期でもありますが、ストーリーにも使っている所があります。 内容は非常に多彩な内容で色々な種類の事件に出会います。 最近は新作の発表が途絶えている作者ですが、短篇の名手は本連作集でも発揮しています。
2003年10月8日
コッペリア<加納朋子>
初長編です。日常の謎・ファンタジー要素などが長編になるとどのようになるのでしょうか。 人形と演劇と過去とくれば、日常とは世界がはなれます。人間にとって人形は特別の存在とも いえます。江戸川乱歩・高木彬光・ベンヘクトなどの作品を思いだします。どちらかと言えば スリラーの印象があります。 本作では人形を巡って、作る・集める・好きになる・自分とそっくりな人形にあう人々が登場 します。特に最後の主人公の出会いが偶然か必然かの謎が大きいですが、この謎と人形との関わり が醸す雰囲気とどちらが主題かと言われると悩みます。・・後者かな・・・。
2003年10月11日
啄木が殺した女<日下圭介>
江戸川乱歩賞受賞以後、ゆっくりしたペースで長編を書きながら短篇の名手として知られている 作者です。初期には動物・植物の生態を謎の解明に取り入れた作品を多く発表しています。 その後、シリーズキャラクターの登場・昭和初期を背景に取り入れた作品も多く手がけています。 本長編もそのひとつと言えるでしょう。ただフィクションでも過去の事実を小説の都合で変えて しまう姿勢を極力さけています。 過去と現在の謎を解く形にはなりますが、過去については謎を作る事が出来ないのでかなりの制約 となります。豊富な取材による力作ですが、やや切れ味が鈍く感じる気もします。
2003年10月13日
青葉の頃は終わった<近藤史恵>
帯やカバーには、青春ミステリー・長編推理小説と書いてあります。 そのつもりで読むと辛い内容です。友人の自殺の理由を探す話ですが謎といえるかどうか読みおわら ないと分かりません。半分までは意味が分からないで読むしかありません。全4章中の3章で事件らしき 事が起きますが、本筋とは異なります。 結局は動機さがしなのですが、謎が存在するのかどうかが分からないのとその謎が読者を選ぶ所に、 疑問があります。少なくても年齢的に選ばれていなかった私には読む事自体が疲れる小説でした。
2003年10月16日
轍(わだち)の下<西東登>
1965年に出版されています。作者は前年に江戸川乱歩賞を受賞しています。 序と末尾を除くと、犯罪小説の内容です。倒叙推理とは言えないと思います。この2−3年前から 結城昌治・三好徹・河野典生などがスパイ・ハードボイルドスタイルを模索している時期であり、 本作の偶然を繋げた起伏の無い展開は見劣りがします。 問題は序と末尾の追加です。ただ、特に謎があるわけでなく、どんでん返しのある話に留まって います。書かれた時代を加味して読むようにしていますが、当時のレベルでも失敗作だったと思います。
2003年10月19日
プレシャス・ライアー<菅浩江>
「近未来SF小説」です。 コンピュータによるバーチャルの世界は知識として広がっているので、驚かないでしょう。所が 知識からはみだした世界に入ると現実とはなにかが分からなくなってしまう事がテーマです。 作者はそれをコンピュータ世界と人工頭脳から入り、神とは何か、平行宇宙の存在の有無まで 読者を誘いこんで行きます。キーワードは量子コンピュータと確率と言えば、ネタバレといわれる 可能性もありますが解説にもありますので良いでしょう。それがどのように上記の世界に繋がるかを 謎として読むと推理小説としても読めます。勿論、ファンタジーでもSFでも読者の自由です。
2003年10月21日
博多大花火殺人事件<木谷恭介>
ヴァン・ダインは生涯に書けるまともなミステリは数冊だといいました。もし彼が現在の日本を 見ればどのようなコメントがでるか興味があります。たぶん、重要なのは量ではないと言うでしょう。 英米と日本とは異なるので、日本の作家が多作を求められている事は事実でしょう。 20年で100冊を容易に越える本作者も多作家のひとりです。このような作者の本を初めて読んで 感想を書くことに何の意味があるのかとも思いますが、長編で玉石混在が許される訳ではありません。 本作を読むとミステリとは何かと考えます。背景になるストーリーは面白く出来ていますが、謎が 非常に安易に解決してしまいます。結果的には謎はなかった様な事に見えます。
2003年10月26日
最後のデイナー<島田荘司>
特にミステリーと謳っていないので、このことはコメントする内容ではありません。 「里美上京」「大根奇聞」「最後のデイナー」の3編です。後の2編はミステリ性があります しかし、解決が突然というか極端すぎて、謎が存在したとは言い難いです。 ただ、御手洗潔という人気キャラクターがあり、彼のカリスマ性を読むのを期待する読者は多い ので、それが発揮している2編は別の見方が必要であると思う。 ファンが期待する作品を書く、これは重要と思います
2003年10月29日
宇宙神の不思議<二階堂黎人>
学生水乃サトルシリーズの第2作です。 本格推理小説です。宇宙人とUFOに関する事が沢山出てきます。これをどう思うかで本作の評価が変わる と思います。神秘的現象を合理的に解決するというレベルでは1000枚を越える長編が成立するとは 言い難いです。本作がもし、半分の長さで書かれていたら、好作と思います。しかし、ただ長いとしか 印象の無い部分で長くなっていると感じました。何故余分な事にページを使ったのか理解出来ません。 個人で印象は異なると思いますが、私は計算違いと思いました。
←日記一覧へ戻る
年月別に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。