推理小説読書日記(2003/08)
2003年8月1日
追憶の猫<太田忠司>
久しぶりの藤森涼子シリーズです。もともと本格ではあるが、その色合いは薄いシリーズです。今回は、主人公が探偵社を止め、 そして・・・・で探偵調査どころではありません。でも、事件は解決してしまいます。悩める探偵の結論は? 昔全部ではないにしろ、本格探偵小説は、始めに謎・事件ありきでした。少なくても作者の意識にはあったと思います。 近年、「日常の謎」派や連作集−>長篇的まとまりが多く出されるようになりました。小説の後半で謎が提出される事に抵抗感が なくなりつつあります。そこには前半部をささえる小説技術の進歩があります。長編的連作集もオムニバスではないが、 新しいスタイルとして定着しています。本連作集はまさしく、最近発展してきた方法を最大限に取り入れて、別の主題と合わせることで 読む者を飽きさせない完成度を作り上げています。
2003年8月10日
赫い月照<谺 健二>
600ページの長い作品。実際は何人が死ぬのか分からなくなります。鮎川賞受賞作家であり、間違いなく本格探偵小説です。 4−5件の話が並行して進んで行くように思いますが・・・。密室満載・暗号満載・小説中小説・連続殺人・見立て殺人・意外な結末。 本格探偵小説に必要な要素は全て有ります。しかし、それに加えての、圧倒的エネルギーは何でしょうか? 震災小説とは何でしょうか。 作者が書こうとしているのは、阪神大震災です。 昔から推理小説と、小説(純、大衆)は異なると言われてきました。はたして、作者は推理小説で震災小説を書けたのでしょうか? また、気になるのは作者が震災小説を書き続けるかどうかです。
2003年8月13日
密室殺人大百科(上)
書き下ろしアンソロジーです。編者の意気込みがかならずしも作品につながら無いことが書き下ろしの欠点でもあります。 短篇は玉石混在をそのまま当てはめた感じがします。どうしてもパロデイ・共犯・殺人以外が含まれるのはやむを得ない事と 割り切りましょう。 結局、古典作と太刀打ちできるのは2作ぐらいか?。 他は新しいのか、妥協しているのか、読む人で異なるでしょう。
2003年8月15日
蝶々、死体にとまれ<梶龍雄>
本格探偵小説です。学園ものです。犯人はだれでしょうか。そして、動機は何でしょうか。 本格物と動機とは、あまり相性がよく有りません。でも、真っ向勝負の動機探しもまた、謎に成り得ます。必要なのは、 何に謎があるのかを読者が分かるように書かれていることです。
2003年8月17日
黒いハンカチ<小沼 丹>
たいていの作者は、名前ぐらいは知っていますがこの作者はしりませんでした。純文学系の余技作者との事です。 人名がカタカナ、会話が「」ではなく、|で書かれています。文章も特徴的です。 小さな謎を短く書いています。私の好きなタイプの作品です。
2003年8月20日
葉山宝石館の惨劇<梶龍雄>
カーは密室にする動機を3つにまとめました。本作の密室動機は、広義では含まれるとも言えますが、厳密にはやや異なるとも 言えるでしょう。あまりにも、本格探偵小説作法に則った作品で古いと感じる人もいるかも知れませんが、私にとってはこれが醍醐味です。 探偵役も意外といえると思います。
2003年8月24日
密室殺人大百科(下)
上下で別副題がついているが、特に意味は感じなかた。密室はメルヘンかがテーマだろうか? そうすると、本格かホラーかSFか?という、斎藤肇の「答えのない密室」が一番面白いという結果になる。 このアンソロジーは、密室論や分類を多く取り上げているのが特徴です。ただ並べた感じがあって、結論まで持ってゆけないことは 分かりますが、もう少し整理されたほうが良かったと思います。
2003年8月26日
怪盗道化師<はやみねかおる>
子供向け作品とあなどってはいけません。話が単純だと言っては作者の真意を分かっていないと思います。 題名から全て、怪盗の話だと思ってはいけません。子供に楽しみながら物を教えることの難しさを知りましょう。 今、はやみね作品の大人の愛好者が増えています。勿論、私も。
2003年8月28日
毛皮コートの死体<梶龍雄>
浅草のストリッパーを探偵役にした本格推理小説の短編集です。生き方に起伏を持たせたいと多くの作者が考えています。 そのため、特殊な職業を主人公にする場合が多くあります。問題は本格度の深さですが、この作者には強い指向があります。
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追憶の猫<太田忠司>
久しぶりの藤森涼子シリーズです。もともと本格ではあるが、その色合いは薄いシリーズです。今回は、主人公が探偵社を止め、 そして・・・・で探偵調査どころではありません。でも、事件は解決してしまいます。悩める探偵の結論は? 昔全部ではないにしろ、本格探偵小説は、始めに謎・事件ありきでした。少なくても作者の意識にはあったと思います。 近年、「日常の謎」派や連作集−>長篇的まとまりが多く出されるようになりました。小説の後半で謎が提出される事に抵抗感が なくなりつつあります。そこには前半部をささえる小説技術の進歩があります。長編的連作集もオムニバスではないが、 新しいスタイルとして定着しています。本連作集はまさしく、最近発展してきた方法を最大限に取り入れて、別の主題と合わせることで 読む者を飽きさせない完成度を作り上げています。
2003年8月10日
赫い月照<谺 健二>
600ページの長い作品。実際は何人が死ぬのか分からなくなります。鮎川賞受賞作家であり、間違いなく本格探偵小説です。 4−5件の話が並行して進んで行くように思いますが・・・。密室満載・暗号満載・小説中小説・連続殺人・見立て殺人・意外な結末。 本格探偵小説に必要な要素は全て有ります。しかし、それに加えての、圧倒的エネルギーは何でしょうか? 震災小説とは何でしょうか。 作者が書こうとしているのは、阪神大震災です。 昔から推理小説と、小説(純、大衆)は異なると言われてきました。はたして、作者は推理小説で震災小説を書けたのでしょうか? また、気になるのは作者が震災小説を書き続けるかどうかです。
2003年8月13日
密室殺人大百科(上)
書き下ろしアンソロジーです。編者の意気込みがかならずしも作品につながら無いことが書き下ろしの欠点でもあります。 短篇は玉石混在をそのまま当てはめた感じがします。どうしてもパロデイ・共犯・殺人以外が含まれるのはやむを得ない事と 割り切りましょう。 結局、古典作と太刀打ちできるのは2作ぐらいか?。 他は新しいのか、妥協しているのか、読む人で異なるでしょう。
2003年8月15日
蝶々、死体にとまれ<梶龍雄>
本格探偵小説です。学園ものです。犯人はだれでしょうか。そして、動機は何でしょうか。 本格物と動機とは、あまり相性がよく有りません。でも、真っ向勝負の動機探しもまた、謎に成り得ます。必要なのは、 何に謎があるのかを読者が分かるように書かれていることです。
2003年8月17日
黒いハンカチ<小沼 丹>
たいていの作者は、名前ぐらいは知っていますがこの作者はしりませんでした。純文学系の余技作者との事です。 人名がカタカナ、会話が「」ではなく、|で書かれています。文章も特徴的です。 小さな謎を短く書いています。私の好きなタイプの作品です。
2003年8月20日
葉山宝石館の惨劇<梶龍雄>
カーは密室にする動機を3つにまとめました。本作の密室動機は、広義では含まれるとも言えますが、厳密にはやや異なるとも 言えるでしょう。あまりにも、本格探偵小説作法に則った作品で古いと感じる人もいるかも知れませんが、私にとってはこれが醍醐味です。 探偵役も意外といえると思います。
2003年8月24日
密室殺人大百科(下)
上下で別副題がついているが、特に意味は感じなかた。密室はメルヘンかがテーマだろうか? そうすると、本格かホラーかSFか?という、斎藤肇の「答えのない密室」が一番面白いという結果になる。 このアンソロジーは、密室論や分類を多く取り上げているのが特徴です。ただ並べた感じがあって、結論まで持ってゆけないことは 分かりますが、もう少し整理されたほうが良かったと思います。
2003年8月26日
怪盗道化師<はやみねかおる>
子供向け作品とあなどってはいけません。話が単純だと言っては作者の真意を分かっていないと思います。 題名から全て、怪盗の話だと思ってはいけません。子供に楽しみながら物を教えることの難しさを知りましょう。 今、はやみね作品の大人の愛好者が増えています。勿論、私も。
2003年8月28日
毛皮コートの死体<梶龍雄>
浅草のストリッパーを探偵役にした本格推理小説の短編集です。生き方に起伏を持たせたいと多くの作者が考えています。 そのため、特殊な職業を主人公にする場合が多くあります。問題は本格度の深さですが、この作者には強い指向があります。
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年月別に読んだ本の感想を随時書いてゆきます。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とします。
当然、ネタばれは無しです。